思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

スペースプローブ (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)スペースプローブ (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)
機本 伸司

早川書房 2007-07

プロット的にはじゅうぶん海外のハードSFと比肩しうるものなのだが、できあがったものは、やっぱりどう見てもラノベレベルのもの。
月面着陸ロケットの宇宙船乗っ取りの計画も細部が甘いし(検討段階ではかなりハードル高そうにしておいて、実際は全くもってあっさりと成功してしまう)、現場に行ったごく短時間の間に次々と展開を詰め込みすぎている。なにより最初のヒキからしてクサイし。
ライト・ビーングなどの次々出てくるネーミングセンスにも疑問を感じる。
作者らしく、神、宇宙、異種生命体などのテーマはいいが、さらに弥勒救済伝説とか、伝奇SFにもできそなフリだけあって、うまく畳み(活かし)きれていない感じ。
繰り返し言うが、プロット(展開)そのものは悪くない。なのに、奇しくも作中で最後に登場人物が言うように、出来上がりはラノベか、ハリウッド映画(『アルマゲドン』的な)的になってしまうのは、やはりハードSF的な内容にしては細部のディテールが圧倒的に不足している。それと、やはり計画そのものに無理がありすぎるのと。
また、今回も緒方剛志が、最初の10ページだけ読んで書いただろ?というカバーイラストを描いて悪影響を醸し出している。この内容なら彗星の尾に向かう宇宙船を描くのがスジでしょう。なにより登場人物は30前後じゃない??