本当はビジネスマン向けのアドラー心理学本を読みたかったのだが、子育てはもちろん、子どもを部下と読み替えてもほぼ、応用できる。
「他人にほめられなかったときこそ、親がほめる」
☆☆★
久しぶりに再見。20年ぶり??
初見当時は高校生か社会人なりたて(えらい曖昧やな(^^;))だったが、結構斬新かつ面白かった記憶があるのだが、現在では「こんな残念な映画だったっけ……?(´Д`)」という印象。
理想社会と、それに立ち向かう流れ者/反逆者、という構図は、ありがちだが、『リベリオン 叛逆者』をはじめ、そもそも石ノ森作品に共通の構図ともいえる。
設定や、本作の新キャラであるミカエルのルックは良いのだが、設定の煮詰め方が甘く、ほとんどハリウッド実写映画版『北斗の拳』と大差ない。最大の問題は、主人公ハカイダーの動機が弱いこと。ほぼ『ターミネーター2』のシュワちゃんと同じ。あっちはロボットだからいいが、こっちはまがりなりにも人間が変身するにも関わらず、中身がないのだ。
戦闘シーンも、当時としてはこんなものかもしれないが、ここぞ、というカットが少なく、なんとなくドンパチ、あるいはどつき合ってるだけな感じ。もうギャグにしか見えないシーンもちょいちょいある。
劇伴も、こんなテーマなんだから、ロックか、ひたすら重低音のストリングスやドラムにすればいいのに、『ゼイラム』と大差ない感じ。
とは言え、現在の目で見ても衰えない素晴らしい部分もある。ひとつはなんといってもリファインされたハカイダーのデザイン。そして、クライマックスの戦いで白い部屋の壁が壊れたら、内部が赤い、という鮮烈さ。ここのアイデアはアカデミー賞もの!(°▽°)
深水黎一郎
☆☆☆★
角川書店
シューマンの歌曲『詩人の恋』をテーマにした、短編集。てっきり雑誌掲載短編を集めたのかと感じるが、書き下ろし。各短編には直接のつながりはなく、ゲスト的に重なりがある程度。さらに言えば、最後の中編だけで本作の主眼はすべて盛り込まれている。
本作は、芸術探偵シリーズではあるが、シューマンの、歴史に隠された歴史ミステリ。ある種の暗号ものでもある。
残念なのは、原曲を全く知らなかったこと。特に最後の中編では、全曲通しての歌唱指導まで入っているので、原曲を知らないと全く面白さが分からないのだ。まあ、ここは、芸術探偵ならではの衒学嗜好と、作者特有のギャグシーンが絶妙なコースをついたところなのだが……。
これが色々な作者によるアンソロジーなら、バラバラにも思える作風もプラスに働いたと思うのだが……。どうせなら全作、ペンネームを変えても良かったのに(田中啓文がやってなかったっけ?)。
世間では武漢肺炎を「新型コロナだ」とパニックになっているが、歴史を顧みれば、それ以上の危機を世界や日本は経験しているはず。そんな疑問に答えてくれるのが本書だ。本当なら、こういうのは、テレビでやらないといけない内容だが、当然いまの地上波には期待できないことは言うまでもない。
「チベットの鳥葬は(略)ただ遺体を特定の場所に放置するのかというと、さにあらず。もっと過激で、鳥が食べやすいように専門の役割を担った人間が、遺体を細かく切り刻んだり、スライスしたりして、加工するのである。残った骨も細かく砕き、ツァンバ(こめじるし)に混ぜてこれも鳥に食べさせる。」
あえて(こめじるし)を入れたが、本書のミスとしと、こめじるしはあるのに、脚注が抜けているのはちょっと問題だ。
あとは内容的に重複が多いこと。
「平安時代(略)洗髪は一ヶ月に一回程度という史料もあれば、年に一回だったというものも(略)香は体臭を隠すために用いる消臭剤のような役目も、果たしていたのだろう。」
「梅毒が日本本土で流行する以前には、性産業に従事する女性である遊女たちは、身分にとらわれないある種のファッションスターとして、羨望の眼差しこそ向けられ、差別などの偏見にさらされることはなかった。(略)しかし、梅毒が入ってきたことによって、遊女たちの間に瞬く間に広まり、肉体がボロボロになることは仏罰や神罰の結果であると読み替えられることによって、結果、蔑視・賤視・差別の対象となっていったのである。」
☆☆☆☆
『バタリオン』と同じく、ソ連女性兵士部隊をテーマにしたロシア映画。ただし本作は、僻地の村に駐屯するたった2機の高射砲部隊。指揮官は男の曹長。普通の男性兵士の部隊だったが、酒ばかり飲んでいる兵士たちに嫌気がさして、酒を飲まない部下を希望したら、次に送られてきたのが女性部隊だった、という展開。
状況だけ見ればハーレム状態だが、もちろんそんなことはない。女子校の男性教師もの、というのが一番近い。前線ではないとはいえ、戦場ドラマという感じ。
近年のロシア映画ならではの、画面隅々までピントがバキバキの、隙のないルック。音楽もハリウッド的なドドドドではなく、川井憲次的な抒情的なメロディなので、退屈しない。
高射砲の扱いの描写もミリオタ的見どころ。サブマシンガンやライフルの扱いも重量感がある。
途中で戦死した兵士の補充があるなど、主人公サイドでも遠慮ない展開も良い。特に沼を渡るシチュエーションを実に効果的に用いている。
クライマックスは、ナチスの先遣隊兵士12人VS主人公たち6人のゲリラ戦。気合いだけで勝つのではなく、地形を把握している主人公たちが、地の利を生かして優位を占めるなど、とにかく隙がない佳作だ。
部隊全員では20人くらいだが、偵察隊に5人選ばれるメンバーは誰もキャラが立つように演出されており、よくある誰が死んでも、区別できないから感情が動かされないこともない。
そのための演出として、各キャラのバックボーンが序盤に随時、2、3分程度で語られる。これ、『ジョジョ』的な構成だよなぁ……。
メカフェチ/ミリオタ的には、序盤の高射砲と、そのターゲットたるドイツの爆撃機(?)くらいで、メインは『ランボー』的な銃とナイフのゲリラ戦だが、脚本と演出、撮影など、キャスティングなど、隙のない、隠れた佳作。