思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

ガンダムX(8)

第8話「あの子、許さない!」

今回は良い!作画も(全カットではないが、決めカットを中心に)良いし、男女関係を中心にした人物どうしの心情描写も実にていねいだし、今話から使われている第2回録音ぶんの劇判がふんだんに使われ、ドラマを盛り上げる。もちろん名台詞もふんだんに登場する。

アヴァン・タイトルはガロードの寝室に忍び込むエニルから。「一人ぼっちは、寂しいものよ」 しかしこれ、今もってエニルの色仕掛け(=ガロードが思ったように)なのか、エニルの年下好み故なのか判然としないんだよなぁ…。それとも両方なのか。これだけしっかりした演出の「GX」だから、案外そうなのかもしれない。

ウィッツの危機(どう考えても簡単にジャンプ→変型→飛行で脱出できるとしか思えないのだが…)を救ったのは輸送機に乗ったフロスト兄弟だった。これは、この時は何も語られないが、今話の終盤でガロードに話す内容で、その真相が明らかになる。

ロアビィと合流してフリーデンに帰るウィッツだが、金塊がフリーデンのメンバーにバレてしまう。トニアやシンゴの崩れた表情が面白い(スタッフの馴れのせいか、こういう作画の遊びも見られるようになってきた)。

未だベッドに寝たままのジャミル(前回書き忘れたが、病人のくせにサングラスを掛けたまま、というのが笑える)を見舞いに来ていたサラが、病室を覗きに来たティファを睨む。それを「艦長代理は激務だからな」と遠回しに諭すテクスが、大人だ…。あとでティファにも「ああいうの、よくないな」としっかり注意しているし。

サラがその後でロアビィに「綺麗になったんじゃない?」と言われて「本当ですか?」と険のある声で切り返したり、またその少し後に、ブリッジで軽い調子でナンパしておいて、「今度食事でも」「今のは本気だ」と態度を変えるあたりもロアビィらしい描写。このあたり、ふつうの人間ドラマとしても十二分に成立するしっかりした演出がいいんだよなぁ…。これこそ「GX」の真髄!

ザコットの艦に戻ったサラが、ザコットに「今夜ワインでも…」と手を触られて反射的に頬を張るのは、もちろんガロードにコケにされた腹いせからだが、これも前回のシャワーを踏まえると、そういうことか…、と分かるようになっている。

ガロードがGXを競り落とし損ねた男に襲われる。こういう前回からの駒をしっかり伏線として回収するあたりの構成も、全話脚本を書いているという体制ならでは。殴られて「記憶喪失になった」というガロードに対し、即座に「ショック療法だ」と再度殴るあたりの掛け合いもニクイ。それを助けるのはまたしてもフロスト兄弟。シャギアの影からオルバが出てくる、というのが笑える。

ガロードのおごりでお茶をすることになり、そこで語られるのがフロスト兄弟の美学。負け知らずの兄弟が、唯一勝ちに至らなかった対ガンダム戦をリベンジしたい、というのだ。エアマスターを助けたのもそういう理由だったとここで判明する。「おまえの力で勝ったのではない。ガンダムの性能のおかげで勝ったのだ」という、初代の、ランバ・ラルアムロに言った台詞をオマージュしているあたりもニクイ。展開や重要なポイントはしっかりと初代のパロディになっていながら、しっかりと独自性のある話になっている、という演出手腕は見事としかいいようがない。

いっぽうその頃、エニルもフロスト兄弟と全く同じねらいから、GXをおびき出すためにフリーデンを襲撃する。真の狙いは用心棒に出てきたレオパルドではなく、森ごとフリーデンを焼き払うことにあった。その状況を情報屋に街で吹聴させ、ガロードの耳に入れよう、という作戦だ。

「僕たちの、美学のために」と先行したフロスト兄弟を、「行くしか、ないのか…」「行くしか、ないんだ……!」と隠していた(しっかりとアムロがやったように幌で隠していた)GXにガロードが再び乗り込む!