思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『ゴールデン・エイジ(1)』読了

長い…。確かに終盤には面白さも出てくるけど、それまでがなぁ…。600ページ超あるが、中盤を圧縮して、トータル400ページくらいにできないものか。
いちばんの問題は、読み終えてなお、「これ、副読本がないと設定どころか状況もよく分からない」ということ。未来の話だからいいのかもしれないが、現実のことなのか、バーチャル/ネット上のことなのかが分からないのだ。『重力が衰える時』のように脳内にドラッグやナノマシン的なもので補強しているからフィルターだとかバックアップとかができるのか、記憶をそのまま電子的にどこかに補完してるのか、とにかく状況が見えないのだ。まるでサイバーパンクものを読んでいるように終始五里霧中なのでツライ。そういうのが好きな人にはいいのかもしれないが…。
たぶんグレッグ・イーガン以来の現代作家はアイデンティティをテーマにしている部分が大きいから、逆に敢えて自己をぼやかすような、こういう描き方になるのかもしれないが。
基本的には記憶がなくなったことで、封印された事実が何かを探す、といういわばありがちなスタイルで、それが見えてくる終盤にこそ興味が乗ってくるが、そこまで進むのがしんどい。
帯のソウヤーの賞賛評は3部作通してのことだろう。この巻には「胸躍るアクション」なんてないから。
最後に、訳文にも少々問題ありかも。特にファンタジー系の表記がひっかかったので、他の部分もどうなのか…。覚えてるのでは「レイピア」を「レピアー」としてたりとか。他の実績が『スノウ・クラッシュ』とかなので、サイバーパンク系の訳者なのかも。