思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

真田風雲録

☆☆☆

へんな映画だ。しょっちゅう歌を歌ったり、作中人物が第四の壁を破ったり(このへんは『不良番長』にもあるらしく、東映の社風なのかも)能天気なくせに、画面は妙に凝っている。前衛的といく、舞台演出っぽいとも。
物語は、田舎のやんちゃ少年少女が、猿飛佐助に会い、10年後くらいに真田正之(幸村だっけ?、ちゃんと主要登場人物にはテロップを出してくれてたんだけど(^^;))の元で大阪城に乗り込む。
猿飛佐助だけが、青く光る瞳を見せると、相手の本心が分かるとい、魔法というか山田風太郎忍法というかを使えるが、あとは大したことない。山風つながりで言えば、『風来忍法帖』を連想させなくもない。
突然、自分たちの心情を斉唱で歌い出したり、ミュージカルというのも過大評価で、『お母さんといっしょ』的な子供向けドラマのそれだ。宣教師の格好をしたハーフみたいな人はギターを弾いてるし(歴史考証的にOKなのか? それともハチャメチャ演出の一環? 佐助もほぼ洋服だし。千姫のドレスは、南蛮渡来の贈り物と考えればギリギリありな気がするけど)。よっぽど観るのをやめようと思ったのだが、上述した、構図や演出に通好みの見逃せないものがあったので最後まで観ることに。
黒澤明を彷彿させる、前後3段階の奥行きのある人物配置。懐手をしている人物は、三船敏郎っぽいし。『七人の侍』の一人、千秋実が真田役ってことはあんまり関係ないかもしれないけど。
瞠目したのは、丘の上にいる真田十勇士たちを手前に映し、背景には行軍する兵士たちを映したカット。エキストラは百人を超えるだろう。もうひとつは、猿飛佐助の忍法で、レミングスよろしく池に行軍する敵軍。横に立つ猿飛佐助だけがカラーで、真ん中の敵軍は白黒、というのは舞台演出的でありながら映画でしかできないもので、素晴らしかった。