デイヴィッド・メイス著/伊達奎訳
☆☆★
創元SF文庫
原題は『DEMON-4』。本作独自の、人の脳をメインコンピュータに載せた小型有人潜水艦の名前だ。
世界大戦後の世界で、南極に残された全自動海底要塞を破壊する話。
世界大戦で使われた核の描写がちゃんとしているのがエラい。イギリスの作品だからなのか、はたまた映画だけが特にいい加減なだけだったのか……。
要塞の配置まで含めた戦略的な解説、生体コンピュータ内蔵小型攻撃型潜水艦デーモンのスペックなど、ミリタリーSFとしてはやたら描写が細かい。
作戦も、最初のミッションのパイロットはいちおう第一段階の目的は達するものの廃人になるし、次のパイロットは死亡し、予想通り、自我を取り戻した生体コンピュータの自動(?)操縦で任務を遂行する。
プロットじたいは実にSF的で面白いのだが、短編か中編で最大の効果を発揮するアイデアを、水増ししすぎたようだ。ミリタリーものも好きな私だが、読んでいて、どうにも引き込まれるものも、盛り上がる感じもないのだ。
イルカはおろか、シャチは、果はダイオウイカまでもがコントロールされる世界観は(ある種、笑えるという意味でも)面白い。