思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

現代やくざ 与太者の掟

☆☆☆★

60年前後の映画なので、「現代」と言っても、『賭博なんとか』のように、戦前じゃありませんよ、というくらいのニュアンス。
昭和の社会派推理小説にあるような感じで、これからのヤクザはビジネスよ、という感じで、手形サギをやったりしている。
主役は菅原文太で、どうも本作がデビュー作らしい。演技にしてもヘタクソさは微塵も感じず、堂々たる貫禄である。スーツも似合いすぎて(最近知ったが、元モデルだそうな)、チンピラ役なのだが、刑事のほうがより似つかわしい(^^;)
山城新伍が今回もサンピン役で出ている。若山富三郎(私的には、勝新太郎にしか見えないんだよなぁ……)も、いわゆるオジキ的ないいところも持っていく役どころ。
また、オープニングに志村喬の名前を見つけて期待したが、主人公のメンター的な役ではあるものの、友情出演レベルで、ファンでも、敢えて見る必要まではないだろう。
筋書き的には『賭博なんとか』とか、『ごろつき』(高倉健のボクサーもの。YouTubeで観ると、印象に残らないのが困りもの(^^;))と似たようなもの。クライマックスにカチコミに行くシーンで主題歌が流れるのも一緒。
アクション好きとして注目の殺陣は、ドスを横殴りに大きくスイングするのが特徴。そんな大したことないかな……と思って観ていたら、クライマックスの菅原文太の立ち回りが凄い迫力。わざわざ白いコートを着せて、それが返り血で染まるあたりは、狙い過ぎ(^^;)
本作の眼目の組に入らない一匹狼の菅原文太は格好良すぎである。ヤクザの仁義とカタギのいいとこどりみたいで、ちょっとズルい気もするが。
ただ一点、脚本の矛盾が。刑務所入りの前に音楽喫茶でオルガンを弾いていた女との関係を、「声を交わしたこともなかった」とモノローグしていたので、てっきり弾いているのを眺めていただけかと思ったら、ヤクザに絡まれているのを助けて、ハンカチで手当てしてもらったりしてるやん?!
ラストは、カチコミにで組長をやったあと、半死半生で救急車の担架に運ばれているカットで「終」。サッパリしているのは良い。