おざわゆき
☆☆☆☆★
小池書院
少女漫画家が、実際にシベリアに抑留された父の話を元に描いたノンフィクションマンガ。
目が点な、エッセイマンガみたいな(まあ、実際にあったことを描いた、という点では同じではあるが)キャラなのに、内容がとんでもなくハードなので、そんなのは関係なく引き込まれる。逆に、これが劇画タッチで、背景も緻密に描きこまれていたら、つらくて読み通せないものになっていたかも。『はだしのゲン』なんかより、本作のほうが、よほど多くの人に読まれるべきマンガだと思う。
「虱は宿主がもうダメだと悟るとさっさと宿を替える
病院の死亡者は法律ですべて即座に解剖にまわされる
頭をまっぷたつにしてその中も調べる」
1行目なんかは、実際に地獄のような死者が続出する環境にいたからこそわかる描写。
「シベリア抑留者は他の国へ行った捕虜とは国の対応も違う
他国からの復員兵は補償金が出たりしたが、抑留者は「終戦後は捕虜とはみなされない」とされ、それが無い
1956年 日本とソビエトは日ソ共同宣言で賠償請求権を互いに放棄してしまう
その後 抑留者による提訴が行われたが原告側の敗訴が続いた」
抑留者に対してもソ連共産党のオルグ工作が行われていた。それは知っていたが、作中にも描かれているように、瀬島龍三のような指導者だけでなく、ほとんどの一般兵に対してまで行われていたとは知らなかった。だからこそ、日本のレッドパージの対象がシベリア抑留者にまで及んだのは、理解できなくはないが、いくらなんでも酷い。日ソ共同宣言も含め、その時点で日本は社会主義国(共産党の影響下)に成り下がってしまっていたと思わざるを得ない。なぜなら、レッドパージの筆頭たる日本共産党はのうのうと・堂々と存続しているではないか。