思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『怪猫 からくり天井』☆☆★

いわゆる、佐賀の化け猫騒動という、史実をベースにしたお話。
御家騒動をベースに、妖怪ものの怪談テイストをプラスした作り。
古典的な歌舞伎の演出が随所に見られるのは戦後の邦画の特徴で、人間の女が油をすする時に猫の影になるとか、回想シーンで、まさに歌舞伎の舞台のようなセットになる、とか。また、化け猫が天井まで跳ねるところではワイヤーワーク(吊り)の伝統技術が生かされているような気もする(スーパー歌舞伎的な吊りが、どれくらい昔からされていたのかは知らんけど)。
現代の視点から見て興味深かったのはが、化け猫の設定。いわゆるJホラー的な怨霊ではなく、実態のある怪物なのだ。どこからともなく現れたり、不意に消えるシーンもあるので、その辺は統一感があるとはいえないが、人間の本体がいて、突如変身したり、ちゃんと壁を越えて逃げたりする。
また、化猫と対決する際に、刀を構えるのが武士、ということもあって、腰が引けているわけではなく、しっかり腰が入った本気の構えだったりするのも興味深い。化猫というファンタジーを除けば、撮影や殺陣、演技は実に大真面目に作られているのだ。それは御家騒動、クーデターという政治劇の部分も同様。
劇伴も、実に正統派のオーケストラで、ある意味では伊福部昭の怪獣映画のような、安心して見ていられる作り。
いや、だからと言ってわざわざ観る価値あり、とまでは言わないが(^_^;)

1958年 日本