思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『怪談 蛇女』☆☆☆★

事前情報ゼロだが、なんとなく江戸時代が舞台の白黒映画かと思ったら、カラーで、戦前の大地主と小作人の話のようだ。
播州皿屋敷』をみるまでもなく、こういうのは暴虐非道なヤツに、虐められて、その復讐に幽霊が出てくる、というのがフォーマット。本作でも、地主によって家や土地を取り上げられて、主人公の父親は自殺し、母娘は地主の家でタダ働き。当然、いびられる。
とはいえ、同様に機織りに働かされている娘たちはそれなりに天真爛漫だし、気のいい小間使いもいる。その一人が歌う「トントンとんがらしは、辛いね」という歌が妙に頭にこびりつく(^_^;)
地主の家族によるいびりによって、母親が死に、主人公の娘も、若旦那にレイプされたりして、命を落とすことになる。
復讐に来た許嫁が返り討ちにあって転落死したりするが、最終的には霊媒師によるお祓いをする、というなんだかよくわからない展開になる。そこで降霊術で恨み言を言わせたりするという、妙に現代的な展開に。それまでに散々、幻視・幻聴を地主たちは揃って見ているんだから、何を今更、という感じなのだ。もちろん、その他のいびりに無関係な家人たちも聞く、という意味はあるのかもしれないが、その後はキチガイになって死ぬだけなのだ(´д`)
まあ基本的には観る必要もない映画ではあるが、瞠目した点が2つあった。1つは上述の「とんがらしの歌」(^_^;)だが、もう1つはラストシーン(ラストカット)。
非業の死を遂げた4人(許嫁含む)が、山伏の格好(なぜかわからんが、黄泉の旅路のイメージ?)で、スモークの焚かれた床を、奥の太陽目掛けてとぼとぼと歩いてゆく背中を写したカットが、実に幻想的で美しいのだ。現在なら、CGを駆使して簡単にそれっぽく作るんだろうが、アナログ特撮(というほどでもない、原始的な美術効果)だけで、これだけ色彩的にも画面的にも幻想的な画面を作れるのだ。これは一見の価値あり。
劇伴は、当時の流行なのかもしれないが、シンセを使った「ビヨビヨ」という感じ(ファミコンっぽいといえば伝わるかな?)で、現代の我々が聴くとなんかギャグにも感じるもの。クライマックスとかは普通のオケなので、普通に見られるのだが。

1968年 日本