思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『ミッドナイト・アフター』☆☆☆

香港(中国)映画で本格SFというのは珍しいなぁ、というので見てみた。ハリウッド映画でよくあるアンバー系のルックが特徴。
とある乗合バスに乗った10人くらいが、とあるトンネルを通っている間に、世界が一変。街中から人っ子ひとり居なくなってしまったのだ。
思わせぶりにガスマスクをつけた日本人(後に集団で登場)や、バス客の一人であるヒロイン(ユキ)に、魔女的な一面が隠されているなど、思わせぶりな伏線(というか隠れていないので、単なる手がかり)は出てくるのに、タイポーだかクーロンだかに向かうところでジ・エンド。120分もあるのに、前編なのだ。しかも本作がコケたのか、後編は作られていないらしい。実際に武漢ウイルスパンデミックで中国でも都市封鎖で街中が無人になったりして、エンタメとして許容できなくなったのか?
一応本作では、乗客たちも、色んな原因で死んでいく。何の前触れもなく倒れたり、焼死したり。崩れて灰になったり、はたまたゾンビよろしく包丁が刺されても生きていたりする。
人間は誰もいないのに、電気は普通に付いていたり、6年後の家族から電話がかかってきたり、デヴィッド・ボウイの歌の歌詞がモールスで送られてきたり。人間が消えた原因も、ウイルスだとも福島を引き合いに出して、原発(香港から少し離れた北にあるらしい)事故で避難したんだと言ったりもする。要するに、思わせぶりなだけで、何一つ解決していないのだ。
さらにはクライマックスも、盛り上がりに欠けると判断されたのか、荒唐無稽なカーアクション(急ハンドルでスリップしたら、何故かジャンプしてバスを飛び越えたり、訳わからん(´д`))があったり、血の雨ならぬ赤い雨が降ったりする。
チュイティエンユーという主人公(?)が『インディペンデンス・デイ』におけるジェフ・ゴールドブラムにあたる博士ポジションで、彼が格好良かったり、ヒロインのユキを演じたジャニス・マンが可愛かったり、バス運転手役のラム・シューのホクロに毛が生えているのがいい味出していたり、細部には良い面がいくつもあるのだが。
肝心のストーリーと設定がダメダメではどうしようもない。少なくとも、本作(前編と仮定して)に出そろったピースを並べても、正解で出るとは思えないんだよなぁ。
ちなみに、本作はR15なのだが、どの辺が?? 乗客の一人を死姦したことを告白した(これも唐突で前振りが何もない)乗客を、全員が一人ずつ順番にナイフで刺す、という展開のあたり?(ちょっとクリスティの某ミステリを彷彿させて面白かった)

2014年 香港(中国)