思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

リアル鬼ごっこ 2015

☆☆☆★

ケレン味とハッタリだけの薄っぺらい、ケータイ小説を読むような人のための作品だろうと、見る気もなかったシリーズ。
本作は、園子温監督ということで、「どうせ低予算のやっつけ仕事だろう」と思って、軽い気持ちで観たが、意外や意外。
基本はドローンを多用した「壮大っぽい画面」と、ショボいCGを活用した、ギャグみたいなスプラッタ。特に冒頭の、バスの上半分が、中の生徒もろともスパッと切れるシーンは「(´д`)」としか表現しようがない。おまけに運転手も真っ二つなのに、蛇行もせずにまっすぐ走って、止まるなど、まあこのシーンだけで「本作ではリアリティは重視しておりません」という宣言ともいえるかも。
ここから、スタンドバトル的な、カマイタチ現象の条件探しが始まるかと思いきや、そうでもなく、普通に夢落ち的に、事件などなかったような登校シーンになる。学校の名前が「私立女子高校」というから、もういい加減も極まれり。ギャグなのか??
途中から、女性教諭たちが機関砲やサブマシンガンとかをぶっ放すのは、誰がどう調達したのとか、銃撃の反動は? とか、これまた現実性を考えたら負け、というどうでもいい展開。
面白いのはここからで、唐突に主人公が篠田麻里子に変わるのだ。それまではトリンドル。ちなみに、血塗れだったのが、川で顔を洗ってほぼスッピンだったのが、途中からメイクしているなんて整合性のなさは、本作では序の口で、突っ込んでいたらキリがない。
で、篠田麻里子に変わるのは、周りがそう見るからだという。急にメタ視点が入ってくるあたりは、押井守イズムか。彼女が結婚式場でキックを主体に乱闘するあたりは、意外とキレがあって美しかった。
3人めは真野恵里菜で、マラソンランナー役。
これ、「彼女たち3人を主役級に起用して映画を作れ」とオーダーされたんだろうなぁ、というのを露骨に皮肉ったような、アクロバティックな設定で、これまたメタ的に楽しんでしまうポイント。
ラストではトリンドルが、自分であることを自覚するだけで、自決することで囚われた世界から解放される、というのも、この手の作品ではベタな展開である。ただ、斎藤工が出てくるところでどうしようもなく「ダメだこりゃ」感が。ゲームの女性キャラを抱こう、というのになんでブリーフ一丁やねん?!(^_^;)
これだけならどうしようもないC級かZ級の低予算映画なのだが、何故☆☆☆★なのかと言えば、これまで書いたメタ的な趣向の他に、所々に、ちょっと至言的・格言なセリフがあるのだ。あと、銃で机についた血を擦るとか、妙にスタイリッシュな演出も「おっ」と注目させるポイント。
エンドロールが歌ものではなく、さらにはロックでもない、めちゃ地味なインストなのも、本作の志を感じさせるポイント。

2015年 日本