思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

キック・アス


原作:マーク・ミラー/作画:ジョン・ロミータJr.
☆☆☆☆★
小学館集英社プロダクション

映画とは違うが、このアメコミ版には確かな魅力がある。
映画にはスピーディーさ、クールさ、何よりもヒットガールのキュートさ(萌え(^^;))があった。
こちらには、オタク男子の等身大の姿、さらにストーリーとしての現実味は、映画版よりもハードだ。
特に主人公のデイブの扱いは、基本的な流れは一緒だが、ことごとく映画よりも救いがない。
悪者にやられる場面でも、最初のチンピラのレベルこそ映画版と大差ないものの、ラストのギャングボスに捕まってからの扱いは、『ジョジョ』も驚くくらいのボッコボコっぷり。悪者からの攻撃具合は、キックアスのみならず、ヒットガールや、ビッグダディについても容赦なく、特にビッグダディの最期は、日本の青年マンガでも、味方サイドの脇役に対してここまでやらないやろ!? というくらい、ある意味でザコキャラなみの描写だ。
ヒットガールは、やはり押井守のアニメ『ブラッド ザ・ラスト・ヴァンパイア』の影響がより濃いと感じる、はっきりとロリ、というか、ディズニーの子供くらいの年恰好である。可愛らしさはあっても、萌え成分はないので念のため。
このコミックが秀逸なのは、主人公デイブのその後だ。ゲイではないことを告白して、映画のように恋人になれるでもなく、元のオタク扱いに逆戻りで、今カレにボコられる始末(T_T) 真面目に展開を考えれば、とうぜんこうなるはずなのだ。
考えたら、本作は、真面目にスーパーヒーローを考えたとはいえ、超常現象(ドクター・マンハッタンとか)の存在は外さなかった『ウォッチメン』をより進めて、徹底的に現実的にヒーロー活動をやるとはどういうことこを突き詰めた傑作と言える。
とは言え、日本のマンガとして見れば、日本的なオノマトペや構図、コマ割りにすれば、さらに面白くなるのになぁ……と思わずにおれない。
衣谷遊とかが日本版を描いてくれないかなぁ。