思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『十一人の侍』☆☆☆☆

考えたら、タイトルからして明示している、というか、当時の観客なら内容は容易に想像がついたのだろう。『十三人の刺客』に『七人の侍』的な演出を加え、『忠臣蔵』の構造に入れ込んだ映画。
言い換えれば、『忠臣蔵』という入れ物(構造)に、『十三人の刺客』という暗殺テーマの物語を、『七人の侍』的な演出を加えたのだ。
要するに日本人いウケる要素を全部盛り。これで面白くなかったら、ホント、ダメダメやん?! というくらい。
特に『忠臣蔵』のツボとも言える、「タメ」や「悪い殿様」、「耐え忍ぶための障害」がこれでもか、というくらい出てくる。まともに感情移入していると耐えられないくらい(^_^;)
また、『十三人の刺客』(当然、三池版ではなくオリジナルの方)では冗長だったクライマックスバトルも、『七人の侍』の状況を取り入れることで、盛り上がるものになっている。わざわざ土砂降りにするところまで同じだが、それによって敵が足止めされるという理由にもなっているあたりがうまい。ただ唯一、惜しいところは、『七人の侍』的な乱戦を描きたいがあまりに、斬り込み前に「松平斉厚以外には目もくれるな」と言っていたのはどうした? というくらい、雑魚相手にてこずっていること。
十三人の刺客』と同じく伊福部御大の音楽は、地味だった同作とは異なり、メロディアスで、能楽のようなテーマ曲から、ちゃんと怪獣映画(『地球防衛軍』だったかな??)戦闘曲まであって、こちらもまた満腹感のあるものになっている。


1967年 日本