マルキ・ド・サド著/澁澤龍彦訳
☆☆☆★
角川e文庫
『美徳の不幸』☆☆☆
敬虔な少女ジャスティーヌが、神の元に善意と深切と貞節を信じるが、この世の不条理が、悪意ある人びとに裏切られる。いわば「神も仏もあるものか」を徹底した物語。押井守監督が推薦していたので気になって読んでみた。
なにしろ18世紀の小説なので、作者による言い聞かせ的な形式のせいで、感情移入がなされないため、こういうプロット、寓話だと割り切って読める。これが現代小説や、映画ならあまりの鬱・鬼展開に、読み通せないだろう。
数世紀前の、古典もいいとこなので、ネタバレ気味で書くが、本作は、ラストまで読むと、どう見てもミステリーやろ?! という仕掛けが明らかになる。それがちょっと面白かったので、その道中は、要するに、信頼してはうらぎられる、の連続なので、流し読みでも全く構わない(^^;)
『悲惨物語』☆☆☆★
こちらは、よりわかりやすい、悪人が最後の最後で改悛する、という話。
ただ、若くて美人で貞淑で純粋な妻を娶りながら、生まれた娘を自分だけを愛するように洗脳し、妻を蔑ろにする。当然、近親相姦である。世間的には、強制ではなく娘から言い出したのだと言い訳させる周到(悪辣)さ(@_@)
興味深かったのは、娘に父である自分を「お兄さま」と呼ばせること。これが妹萌えの元祖??