思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

イップ・マン 完結

☆☆☆☆

妻が死に、自身もガンを宣告された中、高校生の息子ともうまく行かない。そんな中、アメリカ移住の手続きのため、弟子のブルース・リーのカラテ大会招待と併せて渡米したイップ師匠。
本作では、ありがちな差別問題が描かれる。香港映画では、イギリス人と現地人の差別だが、本作では、アメリカ人と中国人移民の差別問題として描かれる。まあ、ベタといえば、よりベタな物語にはなっている。また、その解決は、戦って勝つ、強ければいいのだから、普通の差別問題映画よりは簡単である。それがフィクションならなおさらだ(本作は、実在の人物を元にしているとはいえ、ほぼフィクションと言って過言ではないだろう)。また、白人こそアメリカの主と主張する迫害者に対し、いわゆるインディアンこそ先住民だと言い返す中国人、というのは痛快な正論であった。まあ、それで相手は納得して引き下がったりしないんだけど。
アクションの見せ場としては、第一作から、引っ張りに引っ張って、ようやくちゃんと出てくるブルース・リー。記録に残っているフィルムを再現したカラテ大会に加え、ストリート・ファイトで、ジークンドーで戦うシーンが前半のクライマックス。かなり頑張ってるが、素手の動きのキレは、本物には叶わない。ただ、ヌンチャクに限っては,アップデートされて、スピード感溢れるもので感心した。
この手の、アジア人対白人のバトル映画でいつも気になるのが、どう見ても白人のラスボスの動きのキレが悪いこと。よく言えば、スピードよりもパワー型、ということで、それは本作でも変わらない。その意味で、中盤の山場である、イップ師匠と、中華街のボスであるワン師匠(よく見る人だが、名前は覚えていない)の太極拳との戦いは、カンフー映画好きなら、ストレートに燃えるシーンである。それが、地震で中入りとなるのだが、これ、意味あったの? 史実的に、この時期に東海岸地震が発生あったのかな?
それに継ぐのが、物語のターニングポイントとなる、海兵隊空手部(^^;)による、中華街道場破り。色んな拳法の師匠が、道場破りに次々負けるのもまたこの手の映画のお約束。紅一点要員としてだけ入っていたと思われたおばさんが、ちゃんとした使い手だったのには嬉しい驚きだった。
川井さんの音楽も、意表をつくイアリーダー曲も含めて、盤石の完成度。バトルの形成逆転のところでイップ・マンのテーマが流れると、それだけで燃える/感動してしまう。
ラストは、仲直りした息子に木人拳を教えるところですぐ葬式、エンディングに至るのも良い。ただ、クレジットで、ガンとは言え「70代で死んだ」と聞いて、ずっこけたけどね(^^;) 老けメイクもしてないし、実際の写真みたいにハゲてもいないから、映画だけ見てる人は、50歳くらいで早逝したからかわいそう、って思うやん?!

2019年 中国(香港)