思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

ワタミの失敗』新田龍

「私の見解としては、「批判されやすい背景」に加えて(略)「タイミングが合致した」こと、(略)「やってはいけないことをやってしまった」こと、すなわち「批判に至るすべての条件がそろった」からだと考えている。それらの条件とは(略)
(1)ネガティブ報道のきっかけが「従業員の過労自殺事件」であったこと(略)
(2)最初に詳細に報道したのが「週刊文春」であったこと(略)
(3)渡邊とワタミが「危機管理広報」に失敗したこと(略)渡辺は(略)自分の本音を述べ続けたことによって、世間の反感を大きく買ってしまった(略)
(4)情報が「ネット経由」で拡散する時代であったこと(略)
(5)政治批判の材料に利用されたこと(略)
(6)「ブラック企業」の定義に関して社内外で温度差があったこと(略)
(7)従業員の権利意識が高まったこと(略)
(8)自社労働組合の不在により社員自治機能が喪失していたこと(略)
(9)渡邉が、自身の考えを率直に語る人物であること(略)
(10)渡邊に悪意がなかったこと」

「渡邉の場合、自らの高い能力や才能について無自覚であり、かつ謙虚な人柄でもある。従って、「こんな自分でもできたんだから、君たちにもできる!」と、高い水準の努力を意図せずして押しつけてしまっている」

「「お客様は神様」というフレーズは、演歌歌手の三波春夫から発せられて有名になった言葉だが(略)「お客様を神様と捉える。そうすることで芸に磨きをかけ、心の雑念を払い最高の芸を見せることができる」という主旨である。」

「一般的に欧米では広くワーク・ライフ・バランスが実践されているとの印象が行き渡っているが、その認識は一部間違っている。正確には「欧米では、出世や管理職とは無縁なのノンエリート層では余暇が充実し、ワーク・ライフ・バランスも行き渡っているが、管理職や企業経営を担う一部のエリート層は、日本以上にハードワークである」」

「「ブラック企業批判」に限って言えば、企業側の対応として「いち早くトップが問題の存在を認めて反省」し、「改善策を打ち出して実施」し、「結果としての改善度合いを公表する」というのが最善であると言えよう。」

「渡邊は強力なリーダーシップをもっているが、常に正しいわけではないし、たまに暴走もする。しかしそんなとき、彼を諌め、メッセージをかみ砕いて現場に伝えることができるナンバー2が存在せず、そのしわ寄せは、すべて現場の「人のいい従業員」が背負ってしまったのである。(略)「人のいい従業員が頑張る」ことで何とかなってしまっていたのだ。」