思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

検察側の罪人

☆☆☆★

まず、オープニングはめちゃくちゃ格好いい。『インセプション』っぽいというか、スタイリッシュな東京のビル街の写真をミラー反転させてシンメトリーにしたもの。ただ、それに重ねて本編の登場人物がうっすら映るのはどっちらけだった。
いつとキムタク演技の、キムタクの新境地、といわれる本作だけど、私的には、いつものキムタクにしか見えなかった。悪役寄りだとか、ちょっと狼狽えるシーンがあるくらいで。新境地、というなら、本作の「三度目の殺人」犯人・菊池みたいなサイコ役とか、逆に二宮演じる沖田みたいな役じゃないと。あとは、メンバーの草薙みたいに全裸の白痴役とかね。
本作は、検察を主人公にした、リアルな司法ミステリーかと思わせて、モロに共産党的なプロパガンダ映画でもある。思いつく要素を挙げると、戦前の全否定、現体制の否定、自分が正義だと思えば殺人も肯定、右側であるアパグループを茶化す、左翼国家である戦後日本の右傾化を注意喚起する、など。
劇伴の外し演出(とぼけた感じの音楽)や、学生時代にキムタクを慕っていた少女が洋楽を歌うとか、いちいち鼻につくところが多かった。要するに、真面目な映画と思わせておいて、いろんな意味で尖った、主張全開の映画なのかも。『太陽を奪った男』というと大袈裟な比較だけど。
あと、良かったのが、序盤、被害者の息子のヤクザが捜査本部に怒鳴り込んでくる(それ自体は「んなことあるわけないやろ?!」なシーンなのだが)のを、女性警官が「ふざけんな、クソが!」的なセリフで制止するところ(^_^;) マル暴の男性警官がヤクザと大差ないのはいい加減知られているが、女性でもそうなのかも、と知らされた。

(以下、ネタバレ)
終盤にキムタクが飛ばしケータイとか車、拳銃を調達するところなど「マジか?!」と思うくらい、序盤と比較するとトンデモ展開と言える。後は、二宮と吉岡由里子が情事の後にX字に逆さまに寝ているところなど、ギャグなのか何なのか、理解に苦しむ。