夢枕漠
☆☆☆☆
角川文庫
映画の原作。元々は『神々の山嶺』という題名だったものを、タイアップとして改題。千ページを越える大作だが、漠さんのこと、簡単に読めると思ったら、前半は意外としっかり書かれていて、以外と時間がかかった。ただ、あとになるほどページに占める文字数が減るので、早く読める。
あとがきで、登山ものにかんしては書き切った、とあるように、八千メートルに挑むとはどういうことか、エヴェレストの高所はどういうところなのか、迫真の臨場感が味わえる。
もちろん、映画にあった物語の「なんでそうなるの?」的な不思議展開もない。ただ、恋人の誘拐事件とかはなくてもいいと思うけど。
本作を読んで気が付いたのは、漠さんは詩人である、ということだ。改行を多用し、文字数の少ないページも、原稿料を稼ぐためのみならず、散文詩としての効果を、挙げている。とくに、本作のような非日常環境を描くには、ジャストマッチしている。