思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

少林寺

☆☆☆☆

久しぶりに再見。前に観たのは下手すると15年前かも。
大まかなストーリーは覚えていた。意外と、リンチェイの復讐と戒律の狭間での葛藤がちゃんと描かれていたことに驚く。
だが反面、支那的な「味のあるものは机以外なんでも食べる」というだけあり、僧侶のくせにカエルを殺して瀕死のリンチェイに食べさせたり、リンチェイも、師匠の娘(俗人で、出家前の子)がけしかけた犬を殺して食べたりと、殺生に対して実にあっけらかんとしている(´Д`)
本作は中国からの、少林寺拳法の凄さを見せる、ある種のソフトなプロパガンダ的な側面を持つ。なので、少林寺の日常という名の拳法の修行シーンで、○○拳とかのテロップが出る。本筋からすると蛇足なのだが、カンフー映画おのび先のプロパガンダ映画としては、それこそがメインなのである。リンチェイ以外は、おそらく各拳法の最高峰が演武しているので、実に素晴らしいとしか言いようがない。もちろん、リンチェイの特に一人修行シーンでの人間離れした動きの速さも瞠目もの。
アクション映画としては、リンチェイと将軍の戦いが、合計3回もあるのが興味深い構成と言える。
何しろ、最初に、一般人として将軍に襲われるシーンでも、そこそこ強いのだ。
中盤では、本格的な拳法修行はしていないものの、門前の小僧的に、長剣くらいは使えるようになってから、半ば行きがかり上で、将軍に戦いを挑む。ここに至ると、酔っ払い状態の酔拳将軍には、ここで勝って終わり? というくらいまで追い詰める。しかし、本作では、酔拳少林寺での兄弟子が編み出した、といいながら、全く無関係な将軍や、それを見ただけのリンチェイまで酔拳を使う、というのが脚本的に矛盾しているところ。だが、楽しければいいのだ(^^;)
最後は、冒頭の戦いと同じような、河辺(湖畔かもしれないが、広大な支那大陸のこと、大河だろう)で将軍に剣を突き刺して終わる。「終」の文字のところ、少林寺の遠景(嵩山?)でラストカットとなるあたり、少林寺じたいが主役ですよ、という感じだ。
とにかく、リンチェイだけでなく、支那全土のカンフーの達人たちが、実践形式での演武を見せつける、という点において、最初から最後まで実に鮮やかな映画。