思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

トロール牙峠戦争』スティーブ・ジャクソン著/安田均
☆☆☆☆
新紀元社

歴史的経緯は解説に十二分に載っているので省略。4割くらいは知っているが、おさらいにもなり、当然、30年以上前のことは知らない人がほとんどだろうから、実にありがたい。
私もゲームブックにハマった一人で、尚且つ本書の刊行を期待した一人なので、「我々は30年待ったのだ!」という感じである。
いわゆる善玉ではなく、タイタン世界の三悪といえるザラダン・マー、バルサス・ダイア、そしてザゴールが敵役として登場。ザラダンとバルサスの悪の魔法使い率いる2大勢力の戦争によって、「勝った方が人類の敵になる」ため、一方的勝利によって人類側に攻め込まれることを防ぐため、一人の男ダークメイン(これまた正義のヒーローらしからぬ名前(^_^;))に戦争を長期化・消耗させることを依頼する。この辺の発想がイギリスらしい調略的なところだ。
悪の勢力の戦争なので、登場するのがバラティ豊かなモンスターたち。それをファイティング・ファンタジーおなじみのラス・ニコルソンが大量のイラストを添えてくれている。この、一見、真っ暗だが、騙し絵のような描きこみのイラスト、これこそFFだ!(表紙こそイマイチなのだが、それに騙されずに手に取って欲しい)
FFを読んでいた当時はまだ未読だったが、『指輪物語』後半の戦争や、その映画を観た後では、彼らのリアリティある姿や動きが読みながらイメージできるようになったのも大きい。
面白いのが、ダークメインがザゴールに協力を依頼するにあたって、彼の根拠地である火吹き山を訪れる。それはまさに『火吹き山の魔法使い』のゲームブックの内容のダイジェストそのもの。どれくらいかというと、ラストの謎解きの文字通り鍵となる3つの鍵がどこにあるのかもしっかり書かれているくらい(^_^;)
ゲームブックといえば、作中で何度も「○○するべきか、○○するか」という二者択一、三択な思考法をとるところ。こういうのを見ると、まず作者が小説のような脚本を作った上で、ゲームブック的な分割をしているんだろうなぁ・・・というのが垣間見られる。
どうでもいいことだが、作者表記が「スティーヴ・ジャクスン」じゃなくて昔のままなところに時代を感じるなぁ(^_^;)