☆☆☆☆★
テレビシリーズの内容を知っていて、ただしそれが10年単位で昔に観ただけのわたしからすると、本書は、テレビアニメの補足とストーリーのダイジェスト、というノベライズの要件を十二分に満たしている、と言えよう。そのあたりは前4冊の感想を参照。
最終巻では、テレビ版との違いがはっきり出てくる。終盤に物語を引っ掻き回したレコアが完全にストーリーから離脱した。シロッコの死因がZの体当たりではなく、コロニーレーザー、サイコガンダム2とロザミアがカミーユが最後に対峙するMSである、など。ロザミアにカミーユが母を重ねるあたりは、後の『逆襲のシャア』に連なる富野監督の母性愛テーマに通じる。もっと言えば、人間にとって母の愛情の重さ、であろう。
また、非俗的なところでいえば、オタク界の「妹萌え」を80年代後半から予見していたあたりが凄い。まあ、ロザミアと次のジュドーの妹リィナがその端緒なのだとも思うが……。