思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

半分世界


石川宗生
☆☆★
創元SF文庫

本格SFとは言えない、幻想文学に近い。解説にあるように『火星夜想曲』や、SFあるいは哲学味を抜いた円城塔みたいな感じ。下手すると不条理もの。

『吉田同名』☆☆☆★
あるとき、突然吉田なにがしが千人以上に増えた。普通なら、一人称視点で描くネタだが、本作ではレポートという形で描く。その結果は、日本に難民問題が押し寄せたらどうなるか、をシミュレートしたSFと言える。ネタバレだが、クライマックスで、主人公どうしが交わる(^^;)あたり、なかなかSFチックで面白い。

『半分世界』☆☆★
ある日突然、藤原家の家屋が半分に切れた。半分が消失した、と言ったほうが妥当だろう。ところが、外から断面、つまり家の内部が丸見えで、風雨も入り込むのに、中の人はまったく以前と変わらぬ生活を続けているのだ。野次馬は集まるのだが、マスゴミが退去して集まったり、家人にインタビューしたりもしない。はっきり言って「んな訳あるか!?」というリアリティゼロの展開。こういうのは、前提となる嘘の他に、さらなる嘘を重ねると、途端に冷める。要するに、自分の生活が他人から丸見えになったら? という、インターネットカメラが自分の家の中に何個もあったら? という感じの設定を強引に作り出したもの。

『白黒ダービー小史』☆★
今度は、架空の街の、街全体を使ったサッカーに似た架空のゲームに明け暮れる、内戦シミュレーション。『ロミオとジュリエット』そのまま。

『バス停夜想曲、あるいはロッタリー999』☆☆★
その田舎の十字路には、999の路線バスが通っていた。だが、何日という単位で、いつ何が来るのか、本当に来るのかも定かではない。日本というより、アメリカの田舎の長距離バス、というイメージ。これまたリアリティゼロに近く、星新一の短編みたい。