思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

消えた断章

深水章子
☆☆☆★
光文社

誘拐もの。序章で、誘拐犯からの身代金要求に「断る!」と言い放つ導入に、俄然興味を持たせられる。
そこから本編は、大学生の推理小説家志望の主人公、祖父が定年退職して老人ホームにいる元殺人課刑事、妹が活動的で兄を慕っている、という、法月綸太郎とポテト&スーパーを足したような設定。そんな境遇の主人公の元に、小さい時に誘拐されたことがある、という女子大生が相談にやってくる。それは、実に奇妙な誘拐事件だった。
素人探偵に、現職の刑事が捜査情報を漏らして協力をこう、というご都合主義にも、ギリギリ現実性のある説明がなされている。
メイントリックのひとつには即座に気が付いたが、その背景については、なかなか分からない。なにせ、探偵すらわからず、手紙で真相を明かすタイプの作品(たまにあるが、ある意味探偵の敗北宣言?)なのだ。