思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

そこに無い家に呼ばれる

三津田信三
☆☆★
中央公論新社

導入として、生き物を介さない、家そのものの幽霊は存在するか、という談義があり、そこから3つの中短編を読む、という形。

『あの家に呼ばれる』☆☆★
住宅地の中にある家の隣の空き地に、泥酔して深夜に帰った時にだけ家が現れる。その中に招き寄せられるように入ってみると……。泥酔して、というところからして怖くないのに……。中で起きることは『ジョジョ』っぽい話でもあり、さしずめ家のスタンド、というところ。というか、荒木飛呂彦作品の中で、ほとんどそのまんまな描写があったような……。


『その家に入れない』☆☆★
反対に、周りの住民には家があるような言動を取っているのに、当の住人にだけ空き地にしか見えない、という、映像化したらお笑いコントにしか見えない状況。そこでテントを張って、寝ようとすると足音が……というのもいいかげんマンネリ食傷(´Д`)
自分あての私信という形式が、オリジナリティのつもりなのかもしれないが、ただの手記とどうちがうの??

『この家に囚われる』☆☆★
箱庭療法についての蘊蓄と、ある患者の治療記録という体裁。短編としとみれば、「異形コレクション ドールハウス」なんてのがあればまさにピッタリ、という感じ。


中短編を最後にまとめて解決すら連載長編のスタイルだが、前の2作と異なり、謎の解明どころか、解釈すらないのが特徴。ただし、幕間の作者と編集者の会話がメタ的で、そのへんにも勿論言及してあり、折り込み墨なので、ホラー畑ではないミステリファンにも、そこまでがっかり感はない。
ただし、作者のホラー小説群の中でも怖さ度はかなり低め。全然怖くないと言っても過言ではない。