思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

アルキメデスの大戦』
☆☆☆★

確かに冒頭の大和最期の戦いシークエンスは十分満足。ただし、燃える、感動する、という感じはなかった。比較する意味はないかもしれないが、『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』のペレノール野の戦いの「じゅう」の方が感動した。
そのあとは、オーソッドクスな「無理ゲー」または「プロジェクトX」もの。可もなく不可もなく、という感じ。主人公の助手とも言える田中少尉が最初は反発していたのに、最後には忠実なパートナーとして協力する、という演出は良かった。舌打ちばかりの演技(演出)はちょっとどうかと思ったが。
気になったのが、主人公が渡米する予定なのだが、この時期、アメリカは日本人排斥運動で植民は禁止してるんじゃないのかなあ・・・。作中で戦争の原因として、アメリカの日本人差別やABCD包囲網、石油禁輸、大陸での日本人襲撃などについてはやっぱり一言も触れられない(´д`)
決定会議は、やはり映画としての盛り上がりに欠けると思ったのか、最後には過剰な罵り合いになるのが美しくない。
また、本作のコンセプトからして仕方ないのだが、この映画を観ている人は大和が建造されることを全員知っているので(これについてはまた後述)、主人公の努力が徒労に終わることを知っているので、ある意味無駄に終わる議論であると承知しているのも、いまいち盛り上がれない原因。
ただし、何故か大和サイドの建造が白紙になる、というどんでん返しは、(原作にあったとしても)面白かった。もちろん、この辺りは史実を知っていれば、年代的に逆算して、ここから計画が開始されるのはおかしいな・・・とは思っている人もいたのかもしれないが。また、大和を建造する無意味さこそに意味がある、という持って行き方もなかなか唸らされるものがあった。

ただし、大いに不満がある。
冒頭に大和沈没シーンを持ってきたことだ。これがないか、ラストにあれば、何も知らない外国人が見ても、主人公の行動が無意味に終わることが分からないので、途中でハラハラできるだろう。
また、日本人が観ても、ラストに「日本の象徴」とも作中で言われた大和がやっぱり沈むところで感動するのではないだろうか。
なくても日本人市場では十分成立する映画で、ファンサービスまたは映画の掴みとして入れるシーンとしか思えない。私なら、冒頭には大和が出港、または主砲発射するなどの燃える活躍シーンを入れ、沈没は最後に持ってくるけどなぁ。