思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『神々のたそがれ』
☆☆☆★

SF映画200』で気になっていたもの。しかし、本書に載っていたスチール(死刑囚の女が繋がれている場面)は本編にはなかった気が・・・。別に寝てたわけじゃないので、カットされたシーン??
ほぼ3時間と長すぎるのと、明確な起承転結があるわけではないので、催眠映画とも言われたりする本作だが、私的には(時間の都合で一日に少しずつ観たことは置いておいても)そんなこともなかったので。
まず、驚いたのが、数年前の作品だ、と言うこと。てっきり、『イントレランス』とかのような戦前の作品かと。こんな長編を白黒で撮ろう、と言うのだから、気合の入れようも半端ではない(監督の他の作品を知らないので、基本的に白黒で撮る監督なのかも)。
一応、中世風の文明レベルの惑星に来た人類が、神と崇められて・・・と言う設定なのだが、そんなのは後付け。地球のどこかにあったかもしれないが、どこにもなかったファンタジー中世映画と言っても過言ではに。なぜなら、外宇宙に旅することができるほど進んだ文明や科学の痕跡は、本作にはかけらも見出すことができないからだ。
映画として退屈しなかったのは、レイアウトが凝っているから。ブックレットの解説によれば、全カット、監督がイメージボードか何かを作って、実際にその通りに撮影したそう。(監督が亡くなったのは編集段階)
特徴としては、寄りのカットがほとんどであること。そして、対象物が異常にカメラに近いこと。あちこちに吊るされたものが下手したらカメラのレンズにぶつかっているんじゃないか、と言うこともしょっちゅうだ。
そして、カメラ目線の人物がこれまた多い。メタ的なギャグとかでもないく、ドキュメンタリー的な作りの作品でもないので、一体なになのか? 私は、主人公ドンが王様的な立場で、基本的にほぼ全てのシーンに登場し、視点も最初はドンが映っていなくても、カットを割らずに続くと、フレームインすることがほとんど。これ、ドンの従者の視点ってことなんじゃないかなぁ・・・。ドンからは完全に無視されているし、カメラ目線になる人物から名前を呼ばれることもない。ほとんど無視されるような土人の奴隷、みたいな立場の人物??
内容的な特徴としては、グチョグチョ描写がある。白黒なので何やら分からないのだが、ドロなのかクソなのか血なのかよく分からないものが顔についたり、また登場人物はしょっちゅう唾を吐いている。序盤から雪のみならず、雨やしょんべんやクソまで降ってくる(ご丁寧に便所が壁の張り出しにあって、そこから落ちてくるのだ)。もちろん、食べ物も食べるのだが、この演出は、単純なフード理論(by福田里香)には収まらない。終盤には屍体も出てきて、そこからクソや内臓が出てきたりもする。要するに、人間なんて、口から入ったものがちょっと留まるだけのもので、それは口から出たり、尻から出たり、腹から出たりする過程に過ぎない、ってことなのか(今気づいたけど)。
ハリウッド系のエンタメとは対極の、ヨーロッパ系のソフトストーリー映画だが、画面が強烈なので、目が離せない、そんな作品。全カット圧倒的な作り込みは『マッドマックス 怒りのデスロード』や『ロード・オブ・ザ・リング』を連想させる。