思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『こなもん屋馬子 大阪グルメ総選挙』

田中啓文
☆☆☆☆
実業之日本社文庫

連作短編集。田中作品の看板キャラ(?)蘇我屋馬子が探偵役(?)を務めるシリーズなのだが、いつもとちょっと様子が違う。マスコットや役のイルカの出番が極端に少ないのはいいとして、どの探偵も、主人公が大阪市長だということ(04年の作品なので、橋元市長がモデルか?)。本シリーズは、大阪市長が、馬子との対話お大阪の様々な粉もんグルメを通じて、大阪市長こ役割を見出す物語なのだ。
『メインディッシュ』を書いた北森鴻もそうだが、料理を美味しそうに描ける作者は、小説がうまい、と見て間違いないのでは無いだろうか。特に、本作に出てくる料理は日本人、なかんずく関西人なら必ず食べたことのあるものばかりなので、よだれものの描写ばかり。特に、ナポリタンや、ホットケーキの美味しさを再発見させてくれるのではないだろうか。
短編のテーマとして、『君が代』を扱ったものがあるが、本作では、右でも左でもなく、『君が代』を歌わない理由を挙げているのが面白い。
まあ、大阪のお笑いの歴史を紹介してくれる短編も、勉強になった。