思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『乙女戦争(10)』

『乙女戦争(10)』大西巷一
☆☆☆☆
双葉社

絵が、アメコミっぽいというか、杉浦茂っぽいというか……。アクションも、頑張ってはいるけど、まだまだ。
ただ、巻末の、作者自身による詳細な解説文とかを読むと、膨大な知識を背景にしたマンガ、という点では、ノンフィクションベースか、フィクションかは違えど、士郎正宗に近い。
前の巻のラストで行方不明になった主人公シャールカは、髪型も名前も変わり、記憶喪失で、旅芸人の一座として生活している。これは、日本における出雲阿国みたいな感じ。シャールカも、ここでも単なる日本アニメ的な綺麗事だけではない、生きて行くためには男の相手もしなくてはならないリアリティがあるのが良い。ここからは、長期連載アニメの番外編みたいな感じだが、ただの時間つなぎでなく、中世当時の風俗を描くのと、そして同時代だったジャンヌ・ダルクとのクロスオーバーが描かれる。これ、まさに山田風太郎の得意とする趣向じゃないか!
そのジャンヌ・ダルクの末路も、学校では「捉えられて火あぶりになった」としか習わなかったが、こんな悲惨な最期だったとは……(T_T)