思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『リング0 バースデイ』

リング0 バースデイ』
☆★

『らせん』を除けば3作目ということ、幽霊たる貞子の生前(正体)を描く、という諸々を考え合わせると、どう考えても面白いわけないやろ……と思っていたら、案の定。
当時としてはあまりいなかったロングヘア女優ということで、売れる前の仲間由紀恵を主演にしたまではいいが、演技もヘタだし、綺麗に撮れてもいない。唯一、綺麗に見えたのは、ラスト、井戸の中で見た幻の中で田辺の前で目覚めたカットくらいだった。
上でラストシーンに触れたが、本作にはネタバレも何もない。貞子の運命は、シリーズを見た人なら誰もが知っている。言わば、『スターウォーズ シスの復讐』と同じ問題を抱えているのだ。
生前の貞子が、ある意味では普通の女性で、悪魔的な存在はいわば『ジョジョ』的な暴走型のスタンドだった、という本作の解釈は、面白いと受け取ってもらうにはネタばらしが早すぎるし、大多数のファンには「逃げ」としか受け取られないのではないだろうか。
貞子には幽霊が見えるが、そのへんに立っているだけで何もしない、という表現はちょっと面白かったかな。
記者が貞子の母親からの過去を暴くために迫ってくる、ということじたいはまだしも、拳銃を持っている、というのはリアリティを損なう。終盤では、集団で貞子を撲殺したりと、ちょっと怖い。正統な演出による恐怖ではなく、そんな集団心理に至るプロセスが不充分だからだ。
要するに、『デビルマン』をやりたかったんだろうし、その構図じたいは正しいと思う。だが、『デビルマン』ではガールフレンドの美樹を殺されることに相当するだけの、無差別に全人類を恨むに足る迫害や絶望を貞子が抱くだけの追い込みは、本作からは全く感じ取れない。
原因として考えられることは、本来は貞子の周囲の人間の視点で、得体の知れないものが襲ってくる恐怖を描かなければならないのに、は貞子はスタンドの暴走にも怯えるという、両者の中間にいるためか。やはり、スタンドのしわざであることは終盤まで隠しておくべきで、仲間由紀恵も他の劇団員と同様に、怪奇現象に徹底的に怯えるべきだった。そこへ来てからの、その原因が自分(のスタンド)だった、という絶望と、それまで視聴者と一緒に味わった死の恐怖から、周囲の人間が自分を殺そうとするのも分かる、となるのではないだろうか。
それか、二時間、徹底的に気味悪い能力を持つことで虐められ、唯一の頼りにしていた恋人や親からも裏切られる、とか。
ちなみに、貞子が井戸の中で30日生きていた理由づけとして、怨念の精神力ではなく、単に超能力で、死んでも生き返ることができる、というがっかりな説明も加えられている。これまた、『スターウォーズ ファントム・メナス』のミディ・クロリアンを思わせる「いらんこと言うな」設定である。