思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『眼下の敵』
☆☆☆☆

安定感ある画面とテンポで、いきなり引き込まれた。日常(非戦闘時)から戦闘まで、大袈裟に言えば、戦艦のすべてが描かれている。スクリューシャフトらしき部屋なんて初めて見たし、爆雷の深度調節ダイヤルとかも興味深かった。まあ、古典的名作だから、艦船ファンの基礎知識なんだろうけど。
対するドイツUボート側は、100パーセントミニチュア特撮だが、水中シーンでは、それを感じさせないリアルさ。同じくミニチュアの米戦艦との絡みの必要上描かれた水上シーンではミニチュア感丸出しになってしまうが……。
ストーリーは、ほぼ全編に渡って、米戦艦(駆逐艦?)とUボートのバトルを、邂逅から戦闘終了後までだけ。司令部との通信でも、司令部そのものの場面は一切描かれない潔さ。余談ながら、外部が一切見えない潜水艦の司令室だけのセットで舞台劇の公演とか、インディーズ低予算映画、見てみたいなぁ……。
死傷者もあまり出てこない。序盤、先制攻撃の時に自分のミスで米兵が指を落とす怪我をして以降は、クライマックスの決戦まで出てこないのだ。映画のほとんどの部分は、逃げきろうとするUボートと機会を伺いつつ援軍の到着を待つ、両者の心理戦。そのストイックさも軍事マニア必見の要素。
実物の戦艦を使って撮影したであろう米軍艦は、艦上も艦内も空撮も重厚そのものの。艦船マニアでない私が観てもヨダレもの。真面目は爆雷の水柱が船尾で次々と上がるシーン。現在の目で見ても迫力満点。
なお、『沈黙の艦隊』で陰に陽に本作へのオマージュが捧げられていたことも発見だった。