思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『天竺熱風録(6)』伊藤勢
☆☆☆☆
白泉社

伝奇ものとしては盛り上がりに欠ける幕引きだった。いちおうラスボスも怪しの物であったが、彼らの出自や背景は語られぬまま。
本作は、アクションものとしては異様に長いエピローグというか、戦いが終結してからもなかなか終わらない。まるで『指輪物語』のようだ。
巻末に収録されている作者たちの発言によれば、あくまでも史実をベースにして、王玄策という人物を描く、伝奇ならぬ伝記ものだったのだ。
特にこの最終巻では、スクリーントーンも控えめだし、淡々とストーリーが展開する印象。
面白いのは、序盤に登場する小柄な、オークみたいな王のデザイン。
エピローグで急に浮上してくる仏教談義も、作者らしいと見るか、脱線(暴走)と見るか……。
何より、作者のファンとしては、巻末の対談で、作者の姿(写真)が拝めたのがプレゼントだ。