思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『天気の子』☆☆★

とにもかくにも、劇中、4、5回もある、歌が流れる度に「もうえーわ! 鬱陶しい!」と叫びたくなった。
評判で聞いていた通り、『君の名は』以前までの新海誠らしい、セカイ系に戻った感じ。ただ、クライマックス前に線路を走るシーンで、周りからの冷めた声が聞こえるあたり、いちおう自覚はしているようだ。
とりあえず、長すぎる。てっきりひなが文字通り昇天したら終わりだと思って、ひなを探そうとするのがエピローグだと思っていたら、全然終わらない(@_@;)鳥居をくぐっても何も起きないで終わりだと思ったら終わらない(@_@;)
やっと出会って空から落ちるところ、これで二人が地面に激突して木っ端微塵になり、弟あたりが指輪を拾う、という結末を(絶対にないと分かりつつ)妄想したり。
そもそも、大雨の被害で何人が亡くなっているのか?人的被害だけでなく、経済的被害をほぼ無視しているあたりがセカイ系たる証だ。
終わってみれば、本作はハッピーエンド版の『君の名は』であり、『ラピュタ』と『ポニョ』を合わせたような映画といえる。特に水害の中で、世界の迷惑と被害を無視して、二人だけが幸せであればいい、というあたりが。何度もある逃亡成功シーンは、よくある映画的な御都合主義として百歩譲るとしても。
マチュア声優(俳優)の器用は、監督は声優の演技なんて作品の良し悪しには無関係だと思っているとしか思えない。音響監督の本音が聴いてみたいなぁ……。主人公のバイト先の姪がキャラとしては唯一、偏見なく好きなキャラであった。
キャラデザインもちょっとちぐはぐで、リーゼント刑事も、出オチのキャラかと思いきや、最後までそこそこの出番がある。
映像設計として、ちょいちょい極端なズームアウトがあるのが気になった。もっとも主人公の心情に同化させる必要のある、クライマックスに鳥居への階段を上るシーンなんかもその典型。『クレしん 大人帝国』じゃないけど、主人公を追いかけるカメラワークにすべき場面でしょ?
あと、気象アドバイザーがいるようだが、終盤で雪が降るのだが、科学的には雹が正しいのでは?
そもそも、主人公が北海道から家出をし、困難に耐えてまで東京にとどまる理由が、最初は分からないから共感できないし、終盤で明かされても、そんなイタイ理由?とやっぱり共感できない。十歳以下の子供ならともかく……。
また、SF好きとしては、何ヵ月も(エピローグも含めると何年も)雨が降る理由にイマイチ納得できないものが。これが惑星の構造そのものが違う異世界ものなら良いのだが……。