思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『地獄八景』田中啓文
☆☆☆★
河出文庫

『地獄八景探偵戯』☆☆☆★
辻真先『デッド・ディテクティブ』の系譜となる、SFミステリ。後出しが多く、本格とは言い難いが、まあ、落語のサゲとして楽しめばいいんじゃないかな。

『地獄八景人情戯』☆☆★
会話だけで構成された、完全なSR(枝雀師匠の作ったSF/ショート落語)である。

『地獄八景男女戯』☆☆☆★
二組の男女の心中もの。それがどう繋がるのか……?オチは、この作者だけに、こっち方面だと薄々気がついたが、やっぱり(^_^;)ただ、オチの直前に、文字通り二組の人生が交錯するのをごくさらっと描いているのが、映画的で、爽やかさすら感じた。

『地獄八景笑芸戯』☆☆☆★
大阪人である作者の地が発揮された地獄の吉本新喜劇。これまた落語的なバカ話として頭を空っぽにして読むべし。

『地獄八景白球戯』☆☆☆★
本短編シリーズにおいて地獄の責め苦は、仕事として設定され、いわゆるアフターファイブには自由もある。その時間を使って野球をするのが本作。閻魔の裁きの再審をかけて、おちこぼれ地獄チームと、極楽のエリートチームが戦う。練習時の妨害を乗り越えての特訓が後々活きてくるあたり、スポーツものの王道と言える。

『地獄八景兵士戯』☆☆★
総火演の直前に、とある戦車が戦国時代ならぬ地獄にスリップするのが本作。本作では他の短編にはない、地獄で死んだら無になる、という死んでも復活して永劫の責め苦
を受ける、という地獄の存在意義を覆す矛盾点とか、いろいろ問題あり。

『地獄八景獣人戯』☆☆★
水戸黄門』をパロ・グロ全開で描いたもの。弥七最強説(^_^;)

『地獄八景科学戯』☆☆★
中学生が考えた「地獄なんてないよ。何故なら……」というだけの話。哲学的根拠は浅いが、まあ筋は通っているかな。仏教の基礎知識がある人間が読むにはつらいかな。