思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

アトミック・ブロンド
☆☆☆★

先に観た『カンサス・シティの爆弾娘』ではないが、一昔前なら『金髪爆弾娘』という邦題になったかも(^_^;)
巷の評判から、もっと『マトリックス』的なアクションかと予想していたが、『SPL』だな。要するに形だけでも様式美でもなく、リアルな「殺すか殺されるか、命がけの世界」を描いているのだ。派手なシーンと言えば、中盤の、ホースを使った脱出シーンくらい。
あとは、自分が有利になるなら、使えるものは何でも使う、というスタイル。拳銃を逆手に持ってグリップでどついたり、ワインのコルク抜きで刺したり。ナイフで刺してもなかなか死なない(のもリアル?)。背中に刺さったペティナイフに(身体が固いのと、刺されて筋肉が強張っているから?)手が届かないから抜けない、というのも斬新。
ストーリーは、何か押井守映画みたいだ。スパイものということで、騙して騙されてで、二重スパイや裏切りの連続。ラストでもデカイ口を叩いたりしているが、主人公はあまり能動的なことはやってないような……。何かやっている最中に敵に襲われるのを撃退するだけで、最後には「実は分かってました」的に後出しじゃいけんされても……。このへんは『ミッション・インポッシブル』的かも。
肉弾戦(格闘/アクションというより、肉弾戦というのが相応しい)よりも、実はサブであるガンアクションのほうが見所で、私的にはそちらがメインである『ジョン・ウィック』よりも好み。あちらがあくまでもしっかり構えることを重視しているのに対し、本作では、ほとんど構える(動きが止まる)ことなく、直線的に相手を仕留めるアクションの流れがシャープなのだ。
本作では『ジョン・ウィック』以上に洗練されたのが撮影&色彩設計(ポスプロによる色調製?)の美しさ。単一の色彩で統一するのではなく、シーンごとに鮮やかでありつつ、ネオン調の色彩で作品を統一するのは、結構レベルの高いセンスが必要。
意外にも、シャーリーズ・セロンに惚れることもなく、ゴツくて化粧の濃いガイジン、というイメージでしかなかった。むしろ。ヌードを2回ほどチラ見せしているほか、異常に頑張ってはいるのだが……。
アクションを含め、ビジュアル的には標準以上なのに、もうひとつノレなかったのは、劇伴がインストではなく、80年代の歌もの(洋楽なので、聴いたことないものばかり)だけと言っても過言ではない音楽設計だったからかもしれない要するに、洋楽を知らない人にとっては、ぶつ切れで、映画としての統一感がないのだ。せめて『ミッション・インポッシブル』みたいにノリノリのテーマ曲があれば2割増し(☆☆☆☆)だったのに……。