思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『天竺熱風録(5)』
☆☆☆☆★

ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』に比肩する大軍戦が堪能できる。
これまでの伊藤マンガにはなかった、今時のギャグマンガの表現(ぽわーっとなった顔、ドヤ顔)を取り入れているのが興味深い。
象が曳く戦車と琵琶みたいな民族楽器で『マッドマックス 怒りのデスロード』のオマージュがある。それも本家顔負けの格好よさで!
それ以外でもこの女傑、シーマ様よろしく格好いいのだ!あっさりこの巻でしんじゃったのが残念。

『ジェーン・ドゥの解剖』
☆☆☆☆
一体どんな映画なのか? 興味を曳くタイトル。作品紹介を読むと、「解剖を進めるうちに異状が起こる」という。面白そうではないか。
序盤は、リアルな解剖シーンが描かれる。『科捜研の女』では映されない、皮膚にメスを入れるところや、臓器そのものもちゃんと見える。男女問わず、性器にぼかしが入っているのが残念(劇場ではボカシなかったのかな?)。
時間は見ていないが、30分を過ぎたあたりから奇妙な現象が起きはじめ、一時間めで完全にJホラー状態。正体の分からない人影らしきものが危害を加えて来るあたりは、結構怖い(^_^;)
外傷がないのに骨折や臓器に切り傷があるという謎は、医療ミステリー的には面白い謎なのだが、それが科学的に解明されないのが残念。特に皮膚の裏側に文字が書かれていることに至ると、終盤にあったように、皮膚だけは強力な回復力がある、ということなのか? そのくせ骨折は直せないとか、設定的な一貫性のなさが気になる。もうちょっと、どういう傷つけられかたをして、どこまで再生能力が効いて、どういう順番で再生すると外傷なしになるのか、どこまでされると死ぬのか、彼女の正体が明かされた後でフラッシュバックでもいいから(主人公たちがそこまで推理するのは超能力でもないと不自然)見せてくれないと、納得できん。これでは、単なるアオリのための風呂敷で、全然畳めていない。本格ミステリーとしては失格だ。ホラーとしてもやっぱり超常現象の働くプロセス(作品設定の紹介)は必須だと思うけどなぁ……。
彼女は、魔女だとして拷問され、受けた扱いを自分の生死を問わず周囲の人に「目には目を」で返す自動発動型スタンド使い(^_^;)だったのだ。生前からスタンド使いなら、殺されることもなかっただろうから、どうやら死んでからスタンドが発言したのか。荒木飛呂彦がパクりそう(^_^;)だが、逆にここまで似ていると、逆に本作が『ジョジョ』をパクった可能性が高い。それともちろん『リング』の貞子と呪いの発動事情は同じ。
そんな外側には再生能力が残っているせいか、顔はやたら綺麗で、瞼を開けたままなせいか(現実の解剖現場では眼球の検死をしたら閉じるんしゃないかなぁ……)執拗に顔のアップが挿入されるので、いかにもゾンビとして襲ってきそう。でも、終盤で皮膚が閉じる以外に、彼女じしんが動くことはない。その代わりに周囲の死体を動かして自分への加害者に反撃するのが彼女のスタンド能力。彼女じしんが動くのはラストカットで、それも序盤の「遺体安置所で仮死状態の人が蘇生したら分かるように足に鈴をつける」という伏線が効いている。
あ、いま気づいたけど、中盤で安置所の死体が消える場面で鈴がならないのはミスだよなぁ……。襲撃シーンで鈴を鳴らせば、恐怖演出としても効果的だったのに……。
気になることもあるが、見はじめると止められず、一気観(中盤で怖くて止めようと思ったけど(^_^;))。でも、『ドント・ブリーズ』より断然面白かった。