思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『スタート!』中山七里
☆☆☆☆
光文社

プロの映画製作の経過を追い、様々なトラブルがある、というのは『クランクイン』と全く同じ。『探偵映画』みたいな要素もあるが、まんま『クランクイン』である。
大きな違いは、映画原作が読者によく分かること。このての、ある種の作中作ものは、作中作が大ヒットしている、というのをどう納得させるかが課題になるのだが、本作はなんと作者自身の『連続殺人鬼カエル男』をそのまま持ってきているのだ。タイトルが変えられているし、作中で直接的な言及こそないが、読んだ人には明らかな展開や台詞がある。
製作委員会の具体的な問題点(何故か現場サイドの利点はないのだ( ´△`))もよくわかる。
ちなみに、だからこそなのか、原作者は一切登場しないのが不思議。
さすがは『カエル男』で巧みなプロットを築き上げた作者らしく、大きく2回のどんでん返しが仕掛けられているのが満腹。
作者の唯一の欠点は、タイトルのネーミングセンスがダサダサなことだなぁ……。

「(略)何だよ、この台詞!(略)これは丸々二時間ドラマで茶の間のどんな馬鹿にでも分かるように誇張された台詞だ。」
というこの脚本家の台詞じたいが説明的すぎるのだが( ´△`)

「白いスクリーンを今でも銀幕と呼ぶのは、以前のスクリーンのゲインが恐ろしく低く、輝度を稼ぐために銀を塗布していた事実に基づく。」

スタート! (光文社文庫)スタート! (光文社文庫)
中山 七里

光文社 2015-02-10