『アウト・オブ・コントロール』
☆☆☆
原題は『88』。主人公が泊まった部屋のルームナンバーである。
気づいたら左手を負傷していた上に、さまざまな人物に襲われる。おまけに自分の記憶がない。映画的には、段階的に過去の記憶やシーンが、断片的にフラッシュバックされる。
視聴者は、いったい何があったのかを推理するのが主眼となる。
逆に言えば、普通に、時系列的には流せば、謎でもなんでもないのに、それだけで持たせる作品……かと思いきや、極悪人かと思わせたマフィアのボスが、事故的に恋人を射殺して錯乱していた主人公への愛情から、罪を自分が被るために自殺する、という叙情的なオチもある。単なる技巧に溺れた映画ではない。
北野武的に、あっさり人が殺されるのもポイント。
やたらと画面が点滅するのは、フラッシュバックを多用する断章スタイルの構成と相まって、くどすぎる。
エンドロールは主人公のどアップで、なおかつストップモーションではないのがすごい。その間、まばたきしないんだもんなぁ……(@_@;)
最大の問題は、主人公の性格が、記憶喪失前と後でまるで変わってしまった理由がないこと。再見したら分かるのかなぁ……。
ミステリー小説として読めばいいが、映画としては少々しんどい。謎がメインなのに、じっくり見るには前述のように、それを拒むチカチカする映像なのだ。まだ、構図が完璧なスタイリッシュな画面ならまだ良かったのだが。
アウト・オブ・コントロール [DVD] ジェフリー・グリーンスタイン アルバトロス 2016-11-02 |