思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』ピーター・トライアス著/中原尚哉訳
☆☆☆★

ロボットものとしては言うに及ばず、歴史改変ものとしても中途半端。パラレルワールドでのサイバーパンク、ハードボイルドもの、と分類すべきか。最も近い印象だったのは『スノウ・クラッシュ』とか『フェアリィ・ランド』である。
「メカ」なる巨大ロボットがまともに登場するのは最後の最後だけで、それ以前でも、巨大ロボットが存在する世界観(それが可能な技術レベルに合わせた文化や、そもそも巨大ロボの作動原理も不明)がかっちり構築されているわけでもない。
そもそも、表紙や口絵イラストじたいが、『パシフィック・リム』と『アップルシード』『ドミニオン』を合わせた、オリジナリティのかけらもないもの(絵は上手いけど)。
日本が原爆をアメリカに落として勝利した、という設定も、正しい歴史をベースにしていないので、教科書と新聞、テレビしか見ていないサヨク連中はともかく、日本の右翼視点から見れば読むに絶えない。
一ヶ所だけ「韓国人」が登場するが、日本が勝利したのなら、朝鮮系日本人、台湾系日本人、満洲人は存在しても、韓国人はありえない(元大韓帝国人ならあり得るか)。何故こんな唐突な設定が出てくるのかと不思議だったが、作者は韓国系アメリカ人だからだった(´д`)
参考文献に偽書『レイプオブ・南京』とかも挙がってるし。

歴史的なおかしさを全部すっとばしても、リスペクト/オマージュ元である『高い城の男』の面白さが分からなかった私には、期待していたロボ要素が少ないのに、楽しめる訳がないのであった。

スプラッタ映画好きなら、ちょくちょく出てくる拷問シーンとかが読みどころかな。蟻に腕を食わせるとか(@_@;)

後は、日本のマンガ、アニメの元ネタ探しだが、アメリカ人ならともかく、日本人が喜んでやるようなことではない(これも右翼的視点かな?)。コブラとかは意外なところだったけど。

ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
ピーター トライアス 中原 尚哉

早川書房 2016-10-21