思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

イニシエーション・ラブ』☆☆☆☆

原作を読んでいたので、B面の真ん中くらいで仕掛けは予想がついた(確信したのは本のくだり)。
だが、最初から面白く見られた。冴えない男がモテる、という展開に共感を抱いたのかなぁ……。
でも実は前田敦子も可愛いとは思ってないので、美男美女ではないカップル、というところが良かったのか。
なのでB面に変わってからも、中身があの男だと思えばこそ、ハンサム持て男の話でも、反感を持たずに見られたのか。
本編のラストで分かる仕掛けの後に、テレビか?というくらいバカ丁寧に伏線の解説動画がついている。再録だけではなく、新たに分かる情報もあるが、これは蛇足では?「どうなってるの?」という観客がリピートするという宣伝効果もあると思うのだが……。
なお、何度も出てくるホテルはスーパーヒーロータイムではお馴染みの、茨城県にあるもの。じゃあ、舞台は静岡県じゃなくて茨城県というトリック?などと考えるのは無駄足なので年のため(^_^;)

と、ネタバレなしはここまで。

ラストは、二人が会うところで終わったほうが美しかった。ホテルの受付などの新事実(舞台裏)こそ、エンドロールに流しては?
唯一、手がかりとしてはっきりしなかったのが、静岡のたっくんと会うの曜日をずらしたこと。お泊まり(寝ること)がありになったことで、土曜に東京のたっくんと鉢合わせる危険を避けたから?
不満としては、前田敦子の動機が不明なこと。ラストカットは、彼女のリアクションのストップモーションにすべきだろう。「テヘペロ」的なのか、悪魔または小悪魔的な表情なのか、どちらにせよ本作の印象は全く異なるものになるだろう。まあ、あだ名を無理矢理揃えた当たり、確信犯だと思うけど。小説なら、トリックのための存在として、そこまで気にならないが、実在の人物が演じる映画だと、そのへんが気にならざるを得ないのが面白いところ。

なお、本作の登場人物で最も割りを食ったのが静岡のたっくんだ。前田敦子と東京のたっくんは共に二又。東京の美弥子は彼女の存在を承知。静岡のたっくん(と視聴者)だけが前田敦子の二又を知らないからだ。
まあ、女に縁のなさそうな彼にも、曲がりなりだが付き合えたのだから、良しとせねばなるまいか……。哀しいけどね。

ミステリとして、本作の最大のレッドヘリングが「痩せたら格好いい」という台詞と、「A面からB面に変わるようにガラッと変わった」というモノローグであることは言うまでもないだろう。あとは日付の字幕ね。個人的に最も感心したのが前田敦子の「体調を崩した」くだり。
あ、もちろん、前田敦子の純朴そうなキャラが最大のミスディレクションであることは言うまでもないね。
欲を言えば、劇団関係のエピソードがトリックに絡んでいればなお良かったかな。