思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

この世界の片隅に』☆☆☆★

再見したのだが、名作だと感じた、劇場での初見時にはプラス評価だった点が、ことごとくノイズ要因に感じられたのが興味深かった。
のんの声優演技、広島弁のイントネーションの違和感、作者独特の首を斜め下に傾げる動作の(悪い意味での)滑稽さ。幻想・抽象的演出など、その全てが没入をこばむのだ。
初見では強烈だった原爆投下シーンも、キノコ雲の高さなどがほとんど感じられなかったのは、スクリーン効果なのか。
だが、それであっても、敗戦時の慟哭シーンには泣かされたの。それが、本作のポテンシャルの高さの証明か。
のんの声優っぷりが素朴な演技か、稚拙な声優表現力かどうか……。前者に感じたのは、劇場の雰囲気に呑まれていたせいかもしれない。テレビで見ると、純粋にアニメの演技に合っているかだけが抽出されるのかな?
本作の広島弁も、関西弁のイントネーションとは異なるのが、劇場では広島や呉ならではの方言かと思ったのだが(実際に『東京物語』のイントネーションとそっくり)、これまたなんちゃって関西弁、または声の演技が下手なだけにしか思えなかった。
逆に、艦船や飛行機の実在感は全く衰えていなかった、それが故に様々なバリエーションの空襲シーン(の恐ろしさ)が際立った。爆撃機から見た爆弾炸裂の時間差や、戦闘機機銃の着弾、落下する機体の破片など、普通の戦争映画(アクション映画でも、戦争の悲惨さを訴える映画でも同様に)見過ごされてきたディテール。そしてそこにいる人々には紛れもなく遭遇する現実(危険)だ。

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バンダイビジュアル 2017-09-15