思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

モデルグラフィックス 2018年01月号』
☆☆☆☆

映画『ダンケルク』公開を受けてのスピットファイア特集。様々な超絶作例ではなく、あくまでもにわかモデラーのためのガイドであるのが嬉しい。スケールモデラーのヤタガラス氏と、ガンプラモデラーの小森氏という、異ジャンルの二人が、往年の名キット・タミヤのヨンパチのハウツーをそれぞれ紹介。
もちろんMGらしく、各メーカー別のスピットファイアのキット紹介も。
今年は『ZZ』30周年らしく、同作の模型を断続的に紹介するスタンスらしい本誌。今回はミキシングビルドで1/100のザク3を作る。ハイザックからサザビー、果てはガザCのスタンド(!)までを駆使した力作だが、惜しむらくは、ザク3そのものに魅力がない(´Д`)ことか(^_^;)
スナップフィットのカーモデルを本気で塗装する等も興味深い。

それだけなら、今月号はスルーするつもりだったが、なんと、引退したと思われていた哀原義行氏が復活しているではないか!?まるで高石誠氏のような復活劇。
その作品は、「理論に裏付けられた」超精密工作のたまものなのだが、ボトムズのATという素材じたいのせいで、大きな変化がパッと見て分かりづらいのが惜しい。ボルトを全て然るべき位置に植え替えるとか、凄まじい工作の割に、元デザインやキットを舐めるように把握している人以外には、効果・変化が分からん(^_^;)
(逆に言えば、ガンダムならそのへんは頭に入っているからこそ、哀原作品の凄さがすぐ分かるのかも)
MGジム・スナイパーカスタムも意外と全身に手が入っていて格好良い。

モデルグラフィックス 2018年 01 月号 [雑誌]モデルグラフィックス 2018年 01 月号 [雑誌]

大日本絵画 2017-11-25


『ジャック・グラス伝』
☆☆☆☆

3作からなる連作中編。あとがきによれば、黄金時代のSFとミステリを融合させた作品。なので、当時のミステリ作法に則って、読者への挑戦状が長編としての本作の“冒頭に”おかれている。それによれば、全ての犯人はジャック・グラスその人だという。では倒叙ものか、ピカレスク・ロマンかと思えば、読み進めてみれば、そうではない。否が応でも期待させられるのだが果たして…。

『箱の中』☆☆☆☆★
極刑のとして数人で11年間、小惑星の内部という色々な意味での極限状態での開拓を言い渡された数人の物語。挑戦状によれば、脱獄ものになることは容易に想像できる。その閉鎖空間の描写は、本格SFとしても普通に面白く、ラストの意外な展開は、SFかつ本格ミステリとしてどちらも高レベルのでき。小説としての味付けまで含めて、小林泰三あたりが書いたと言われてもおかしくない。

『超光速殺人』☆☆☆
ここで本シリーズのヒロイン、ダイアナが登場。あれ、ジャックは?そう、本作のラストで登場すると、○○であることも含めて、黄金時代のミステリらしいところ。だが、長編のエピローグにいたると、アンフェアな記述ではないことが明らかになる。それらの仕掛けと、ジャックとの関わりという、長編を構成するピースとしての仕掛けはともかく、単独の中編ミステリーとしてのトリックは凡庸。

『ありえない銃』☆☆★
ここでは、これまでも名前だけは登場していた、銭形のとっつぁん的キャラが登場…したと思ったら、あっさり死亡。不可能状況での殺人、ハウダニットまたは“消えた弾丸”ものミステリーである。
ミステリとしては極めて冗長で、(SFならではのテレポートなんかも含めて)あらゆる可能性を考慮しているようでいて、実は同じことしか言っていない。約140ページもあるが、半分で充分の内容だ。トリックじたいも、ほとんどアンフェアで、SF的なこじつけ(言い訳)とビジュアルで、なんとか取り繕っている感じ。

ミステリSFファンなら必読ではあるけれど、『箱の中』だけで充分かも。ただし、作中に出てくる「箱」については、最後まで読まないと説明されないのが欲求不満かも。ただし、説明されても、腑に落ちるとは思えないが…。

ジャック・グラス伝: 宇宙的殺人者 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)ジャック・グラス伝: 宇宙的殺人者 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
アダム ロバーツ Adam Roberts

早川書房 2017-08-24