思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『ジュピター20XX』
☆☆☆★

いかにもレンタルビデオ屋に並んでいるC級っぽいだが、確かに低予算感が滲み出ている。
ほぼ宇宙船内だけ、しかも四畳半以下の一部屋だけでの密室劇で、登場人物もほとんど1人。『ゼロ・グラビティ』と争う潔さである。
しかし、内容を考えると、確かにこの手があったか、という秀逸な設定。宇宙船内の孤独を描くのに、これ以上の状況はない。
もちろん、宇宙船の位置を示すショットは随時に出るが、全てCG。とは言え、金星上空のカットはなかなか素晴らしいできである。
ひたすら故障箇所を修了するという、やっていることは『アポロ13』と大差ない。違うのは、時差があることくらい。
致命的な欠陥は、最後に主人公が地球軌道上まで戻って来ながら、木星に向けて再出発するというラスト。そんな燃料・食料あるの?いくら人員が半分に減ったからと言っても。それとも片道キッフであることを承知で行ったということ?そのあたりの説明が欲しかった。後は残業というか、プロジェクトの延長を強いられる(?)地上スタッフのサポート体制の問題とか。
最大の問題は、黒人というか、フィリピン人らしい主人公のドアップを見続けることができるか、という好き嫌いの問題かも(^_^;)


『クランクイン』
☆☆☆☆

映画製作の舞台裏を描いたエンターテイメント小説。広義のミステリーだが、ラストには狭義のミステリとしてのサプライズもある。ただし、これはよく言えばおまけ、悪く言えば蛇足。
本編そのものは、映画製作にまつわる業界ネタや、困難を乗り越えるタイプの話。『探偵映画』よりも、霞流一『死写室』に近い。しかし、トラブルを乗り越えつつ、なんだかんだでプロジェクトをうまく成功させる展開は『大日本サムライガール』が一番近いかも。
特に、映画製作には、何にもどれくらい金がかかるか、という具体的な解説は本作の白眉と言える。逆に、わがまま原作者とかは、定番過ぎて別に面白くない設定と言える。
タイトルから分かると思うけど、クランクインするまでで9割。本来なら、撮影中のトラブルを描く下巻があってもおかしくない。
映画ファンなら必読。

クランクインクランクイン
相場 英雄

双葉社 2016-11-16


ジュピター20XX [DVD]ジュピター20XX [DVD]

アメイジングD.C. 2014-06-04