思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『フューリー』
☆☆☆☆

この作品は、戦車映画という戦争映画のサブジャンル内での『プライベート・ライアン』だ。

主人公ブラピは、ほとんどシャーマンの内外にいる。或る意味で、本当の主人公はシャーマン戦車と言って過言ではない。
前半のリアリティは凄まじく、開始そこそこで、新兵の視点から戦争の壮絶さを伝えるため、敵兵の死体をブルドーザーで片付けるは、戦車内に先任の顔の一部が転がっているわで、若い人にはトラウマ必至。
戦車の運用でも、前半の区切りである、小隊単位での、歩兵が戦車の後ろに隠れて進むシーンは本作の白眉。赤や緑の機関銃の曳光弾まるでSF映画のだが、これは考証通り?
中盤の見せ場は、たった1輌のティガー1にシャーマン3輌が撃破される戦闘。ただし、主人公たちがそれに勝つ戦法は、『劇場版ガルパン』のラストバトルと大差なく、このあたりからリアリティレベルが下がり始める。
後半になるとリアリティよりハッタリが全面に出てくるのは『劇場版ガールズ&パンツァー』や『シン・ゴジラ』と同じ構成。
もちろん、敢えてやっている部分もあるのだろうが、それなら、主人公(は本当は新兵で、ブラピはメンター役なのだが、)ブラピの性格を戦場に適応し、必要なら捕虜をも殺すリアリストではなく、ある種の理想主義者にしたほうが良かったのでは?そうすればラストのたった1輌で300人の敵歩兵部隊の何十人も殺すというヒロイックな展開とのバランスも取れていたように思う。
前半までのリアリティレベルなら、死んだふりの奇襲成功まではいいとして、その後は散開した敵兵部隊の、パンツァーファウスト等の波状攻撃で押し包まれるようにして絶体絶命の上、自決、というのが当然の展開。
まあ、最後は下部の脱出ハッチも見せてくれるし、中盤までのバリバリ動いて機銃と主砲をぶっ放す戦車が見られるだけで満腹(五億点)の映画ではある。