思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

藁の楯
☆☆☆☆
幼女連続殺人犯に10億円の懸賞金をかけたら、ヤクザは言うまでもなく、一般人はもちろん、警察官まで、誰もかれもが容疑者の命を狙うようになった。九州で出頭した被疑者を護送するSPが主人公。
もっとも気になったのは、リアリティに欠ける設定ではなく、新幹線が台湾新幹線であること。それなのに駅名は日本の実在するものなのだ。特に新神戸は100%違うと断言できる。特にロケできないような無茶な場面はないし、日台合作でもないのだから、理由がよく分からない。
文字通り手を替え品を替え、次々に遅い来る刺客に、SPが次々に死んでいく展開は良い。
最後には懸賞金をかけた老人が仕込み杖で被疑者を襲うのを止めたら、落とした刀で主人公が刺される。プロのくせに、拳銃を奪われたり、タクシーで嘘泣きしている被疑者が「降ろしてください」と言われたらあっさり下ろすなど、ちょいちょい甘々なのが問題。
そんな死傷者続出の元凶である被疑者にも死刑判決が下るのが、本作のテーマ(法治国家のあり方?)であろう。
刺された主人公らしい男が一命を取り留め、少年と歩いていくのがラストシーンなのだが、主人公には子供はいない。誰??
全体に、過剰に派手なトラック特攻爆発といい、拳銃はバンバンぶっぱなしたり、韓国映画みたいな印象だった。

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ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント 2014-12-17


『質量はどのように生まれるのか』橋本章二
☆☆☆☆
さすがはブルーバックスと言うべきか、なかなかわかりやすい説明が数々あった。

「時間的に変動する電場があると、電流があるのと同じようにまわりに磁場ができる。一方で、変動する磁場があると、周りに電場ができる。これをくりかえしていくと、電場と磁場の変化が次々と起こって伝わっていく。これを私たちは電磁波と呼んでいる。」

「これを中間子と呼ぶのは、その質量が電子よりもずっと重く、陽子・中性子よりもずっと軽い、つまり中間にあるからだ。」


「例えば、極端な話、2つのフェルミ粒子が同じ場所にいたとしよう。つまり2つの波は同じ場所にある同じ形の涙。やはり2つの粒子は区別がつかないので、一番目と二番目を逆にしたものを引かないといけない。だが、今度はどちらも同じ山なので、引くとゼロになる。波動関数がゼロということは、それが起こる確率もゼロということだ。
 これが、有名なパウリの排他律だ。」

カイラル対称性が成り立つというときには、「右巻き粒子と左巻き反粒子」のセットと「左巻き粒子と右巻き反粒子」のセットが互いに無関係になっている。今のように「右巻き粒子と右巻き反粒子」がくっついてしまうと、今度は2つのセットが違い(引用者注:「互い」の間違いか?)に無関係というわけにはいかなくなる。これが、真空が対称性を自発的に破るということの意味だ。」

「初めて発見した人にはノーベル賞が贈られ、あとから勉強する大学院生は計算間違いが見つかって指導教官にしかられるのが関の山だ。科学の世界では「初めて」に対する評価はそれほど高く、二番目以降は紙くず以下の扱いになる。」
蓮舫への反論。

質量はどのように生まれるのか―素粒子物理最大のミステリーに迫る (ブルーバックス)質量はどのように生まれるのか―素粒子物理最大のミステリーに迫る (ブルーバックス)
橋本 省二

講談社 2010-04-21