思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『時の娘』
☆☆☆★

歴史ミステリー史上の名作とされている作品。
確かに、最終的な結論と、その根拠は十分楽しめる。
導入が、リチャード三世の肖像画からの顔相占い的なところから入るのも面白い。
ただ、そこから本論に入るまでが長い、というか、あちこちの史料にあたる試行錯誤があるので、一気にのめり込む、という感じではないのだ。
何よりも、イギリス史に詳しくない、私を含めた日本の読者には、出てくる人名、地名の殆どを知らない(分からない)のが致命的。まあこれは、外人が『QED』シリーズを読んでも全く分からないだろうことと同じ。
それでも最後まで読み通せたのは、誰が得をするのか?アリバイ、真犯人と、共犯者(実行者?)という考え方が、正にミステリのそれだから。このあたりは、探偵役が警部という設定がうまくハマっている。
何よりも、小泉喜美子の翻訳が素晴らしい。
タイトルは、意外にも原題の直訳。なのだが、真犯人でも共犯者でもない。先に挙げた誰が誰やら問題があるが、要するに被害者を指す?


私が彼を殺した
☆☆☆☆

解決編のない本格ミステリ。何しろ、袋綴じを含め、本のどこにも真犯人の名前が書いていないのだ。
勘違いしがちなのが、前作『どちらかが彼を殺した』では、容疑者は二人だったのが、本作は三人であること。てっきり唯一の容疑者の動かぬ証拠を残らず押さえる、という趣向かと思っていたのだ。
袋綴じにも、押さえるべきポイントこそ残らず書かれているが、真犯人の名前はやっぱりない。

以下、ネタバレ?

最後の手がかりが、ピルケースが2つあること、そこに付いているのが穂高の前妻の指紋ということだと袋綴じにある。
それ以外でも、雪笹が犯人でないことは分かる。
残るは男のどちらか。
ピルケースごとすり替える必要があるのは駿河なので、穂高事務所に届いた段ボールから前妻の持っていたピルケースに入れた毒薬ですり替えた。
神林は穂高事務所に前妻のピルケースがある事は知らないし、忍び込んだ形跡もない。
従って、犯人は駿河

うーん、袋綴じがないと絶対分からんぞ(^_^;)
今回は伏線をチェックしまくり、何回も読み返して挑んだのに…(@_@)