思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

イップ・マン 葉問』が第2部にあたり、本作が1作めかと思ったが、どうも違うようだ。
ドニー・イェンにとっての『ワンス・アポン・ア・タイム イン・チャイナ』なので、『天地大乱』(第2作)と『天地黎明』(第1作)の関係が脳裏に浮かんだ(香港での公開と日本の輸入の順番が逆)のだ。
ところが、本シリーズの場合は、どうやらリメイクというか、パラレルな関係のように思える。
ウォン・フェイホンやフォ・ユァンジアのような尊敬される武術師匠ものと同じような展開。それ系のカンフーとしては、まあ特筆すべきところはない。
政治的・歴史的に日本軍の描かれ方については、中共プロパガンダで、まあ日本軍の言動がそのまま中共軍が過去・現在内外でやっていることだと考えて良いだろう。
本作が素晴らしいのは撮影。
バットマン ダークナイト』のような感じとも違うが、モノトーンというか、黒っぽいというか、実に渋いというか上品な感じなのだ。

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Happinet(SB)(D) 2011-06-02


『毒入りチョコレート事件』
☆☆☆☆

再読。
犯罪研究会のメンバーによる推理合戦を描く。
発表順番はくじ引きだが、名探偵たるシェリンガムは四番め。普通なら、シェリンガムの時点で真相を出させるか、全員終わった後で名探偵が新事実を発見する、という展開になるのだろうが、本作はそうではないのが面白い。
確かに、始めのほうの「偽推理」は、証拠の揃え方が少ないのが見え見えだが、それでもその中ではそれぞれ説得力があるのが凄い。さらに、真相以外の全ての単純に間違いとして葬り去られるのではなく、真相の推理披露に当たって、一覧表となって吟味されるという構成が見事!
確かに、犯罪研究会のメンバーが聞き込みに行って、都合よく証言を聞き出せるとか、そもそも警察が匙を投げてシェリンガムに相談する、というリアリティのなさはあるが、前述した推理合戦の面白さの前には些末なことだ。

毒入りチョコレート事件【新版】 (創元推理文庫)毒入りチョコレート事件【新版】 (創元推理文庫)
アントニイ・バークリー 高橋 泰邦

東京創元社 2009-11-10