思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『ローグ・ワン』
☆☆☆☆

途中までは平凡(よくある)なSF映画、という印象だった。
俯瞰、ヒキの画が多いのも、『スター・ウォーズ』らしくない感じがした。(設定は全然違うが)雰囲気的には『オブリビオン』を連想した。
途中からは、戦争もの、特殊部隊ものの雰囲気。とにかく白人の見た目と、名前の区別ができないのは弱った。特に主人公周辺。
ベイダーも終盤まで出てこない。その代わり、デス・スターの最高司令官グランドモフ・ターキンがバリバリ出てくるのは良かった。CGによる張り込み(顔面すり替え)だと思うが、凄い技術である。
すげ替えでは、バックショットだけかと思った、若きレイアも驚き。何気に好きな反乱同盟軍の指導者モン・モスマ(モン・カラマり族と紛らわしいなあ…)が結構出てきたのも嬉しい(こちらはそっくりさんらしい)。

ある意味では旧3部作のリメイク的な側面もある本作で、エピソード4の惑星破壊を、地上目線から克明に描いたシーンは見どころ。ただし、結果的には最初のジェダは『2012』に、次は『ディープ・インパクト』と大差ないものになっていたのが残念。

ストーリー的には、中盤の父親からのホログラムで状況から父子の相克全てを説明してしまうのは、ダメな脚本の典型のような…。後、怪物によって自白させられるパイロットが、「腑抜けになる」と言われていたのに、あっさりまともになる、週刊連載マンガ的御都合主義は如何なものか。
初のアジア人メインキャラであるドニー・イェンは、フォース教の司祭のような上手い設定。フォースを持っているとも、たまたまだとも取れる演出は上手い。ただし、せっかくなので戦った上で死んで欲しかった。
ラストでローグ・ワン部隊が全滅するのは『新たなる希望』に繋げる絶望を強調する意味で良かった。

ファン接待要素も、デス・スターのレーザー発射シーンやC-3POはわかりやすいところだが、個人的には名前だけ出て来るアンティリーズにグッと来た。

3D版で観ると、メカがオモチャっぽく見えるのが欠点。新メカでは、帝国のシャトル(トンボか古代生物みたいな4枚羽根のやつ)は割と良かった。ちょつと『スターシップ・トルーパーズ』みたいな艦首だけど。メカは、AT-AT全般と、クライマックスのスター・デストロイヤーの衝突は良かった。その原因を作ったハンマーヘッドはどうかと思うが…。Uウィングは、『エピソード1』のナブーの宇宙船やタンティブ4に似たようなシルエットで、かつ可変翼、と言うのがニクい。
ラストの反乱同盟軍艦隊からのバトルはそのまま『ジェダイの復讐』を現在の技術でリメイクした側面が大。しかも成功していると思う。特に雲霞のごとく湧き出て来るタイ・ファイターとか。
ベイダーが同盟軍戦艦に乗り込んでからの無双っぷりには、悪役ながら燃える。そしてエンドロールのメインテーマ!この10分だけでそれまでのもやもやが吹っ飛ぶ。
新曲のほうは『エピソード2』の愛のテーマみたいなのが印象には残ったが、好きなメロディーはなかった。雰囲気を盛り上げるストリングスだけの最近のハリウッド映画の中では頑張ってメロディーのある劇伴にはなっていたのだが。


風来忍法帖
☆☆☆☆★

忍法帖シリーズでは、作者の自薦ベストである『笑い陰陽師』に近いテイスト。主人公たちがプロの忍者ではないが、香具師という、ある種のいい加減なやつら。そんなやつらを主人公にするのが人を喰っている。ただし、ある意味では忍者顔負けの特殊能力を持っている設定が面白い。まあ、文字通り超人的能力を持つ忍者を相手にするには逸れこそのハンデ(というか下駄?)は足しにしかならないのだが。
プロではない人々が、不可能なミッションに挑む、という点において、山田正紀の『火神を盗め』などの冒険小説に通じるサスペンスがある。それを持ち前の口車と機転(いちおう習った忍法ではないのが特徴)でくぐり抜けるのが醍醐味。
ベースは史実に忠実なのが山田風太郎の凄いところ。恨んでいるはずの麻也姫を守るために戦う皮肉、次から次へと主人公たちを襲う危機は週刊連載マンガ、あるいは講談のようなノリ。これこそマンガ化すべき作品かも。まあ、エロ要素が多すぎるからムリかもしれないが。
連載マンガに近い要素の一つとして、忍法帖としては序盤に大きなミッション(使命・任務)が与えられるのが定番なのだが、それがない。タイトル通り風来坊の香具師らしく、麻也姫を「ヨツにカマる」という目的はあるものの、実際に姫を目の前にしても素直にそうはしない。一見迷走しているように見えて、もたつき感や隔靴掻痒感がないのが凄いところ。