思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『Dの殺人事件、まことに恐ろしきは』
☆☆☆★

乱歩作品のパロディかオマージュか。元ネタとのずらし具合は『新本格もどき』に近い。
どの作品にもスマートフォンがコミュニケーションのツールとして登場するのが印象的。


『椅子?人間!』☆☆☆
これは『人間椅子』にかなり近い。最も違うのは、スマートフォンによってリアルタイムで意志疎通できる為、椅子の中にいるかもしれない相手と対話している恐怖がある点だ。

スマホと旅する男』☆☆☆

広義のミステリーとしてのドンデン返しはあるものの、SFの範疇だろう。スマートフォン(の中の人)との関係が『人でなし…』と同じなのが引っかかるが。

『Dの殺人事件、まことに恐ろしきは』☆☆☆
展開としてはこちらも元ネタに近い雰囲気。多重解決趣向が楽しいが、最後に子供相手にペコペコするのはいただけないなあ…。

『「お勢登場」を読んだ男』☆☆☆
これはホラーに分類できる。このバラエティ豊さが、乱歩らしいかも。プロパビリティの犯罪と遠隔殺人と言えなくもないが。

『赤い部屋はいかにリフォームされたか?』☆☆☆★
舞台劇を描いているので、展開や結末はだいたい予想の範囲内。オチの皮肉というかブラックさは作者らしい。

『陰獣幻戯』☆☆☆☆
主人公の特殊性癖がもうひとつ活きていない。ノーマルな人でも成立するのが最大の欠点なのだが、基本的にはサスペンス、ドンデン返し、伏線共に及第点。起承転結の「転」の意外性、殺人の動機、被害者の反撃も詰まった終盤の盛り沢山の展開が良い。そのぶん、主人公の設定など、序盤の散漫さが惜しい

『人でなしの恋からはじまる物語』☆☆☆★
導入のトリックは良いヒキ。ただし、これも主人公を刑務所に入れる為の説明なので、なくても全く問題ないのが問題。再婚してから突然『二銭銅貨』か?という暗号解読ものになる。暗号を作った目的と、それを探した二組の顛末の皮肉さが良い。

Dの殺人事件、まことに恐ろしきはDの殺人事件、まことに恐ろしきは
歌野 晶午

KADOKAWA 2016-11-02