思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

追記

映画づくりのディテールについては、ADの大変さから、カチンコの使い方、編集のやり方まで、非常に詳しい(気がする)。
ただ、CGとか合成とか、素人がそうそう使える技術か……?(見るに耐えられるものができるか?という意味で)


『ぼくらの映画のつくり方』
☆☆★

映画づくりをテーマにした(広義の)ミステリーには『探偵映画』や『死写室』、本作と同じくアマチュア映画づくりを扱った倉知淳『』霞流一『映ーアムリタ』などがある。
特に『映ーアムリタ』は大傑作なので、それと近い設定の本作は分が悪い。何しろ、本作での自主制作映画のテーマが『哲学/自分とは何か』なのだ。
このへんは『神』『宇宙』『救世主』など、大風呂敷を広げることを得意とする作者らしい、期待させる設定だが、読み終えると、やはり何の答えもなかった。作品内の答えすらないので、これは失敗作と言って過言ではない。ただし、イコール駄作かというと、そうも言い切れない。自主制作映画の現実を描いた青春小説としてはそれなりに意義がある。『スペースプローブ』がアマチュアが衛星を作る青春小説だとしたら、本作はアマチュアが映画を作る話、という対応だ。
ミステリーとしての謎解きが、終盤に入る前にあるのだが、メタファーの解明はそれなりに盛り上がる。なのに、そこからのひとひねりがないのがミステリーとしては致命的。作中人物同様に、答えが思いつかないから、なんとなくほのぼの要素でお茶を濁しました、というのが残念なのだ。無理にでも、メタファーの解明でおしまいにしたほうが良かったのでは?
しかし、映画を作るのがこんなに大変だとは、よく分かった。(^_^;)